研究課題/領域番号 |
18K02355
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
遠藤 孝夫 岩手大学, 教育学部, 教授 (70211779)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヴァルドルフ学校 / シュタイナー学校 / 私立学校法制 / 私学助成 / バーデン・ヴュルテンベルク州 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、第2次世界大戦後のドイツにおける私立学校法制が、ボン基本法の価値秩序、すなわち自由で民主主義的な根本秩序の確立という価値秩序に対応すると認識されるまでに「肥沃化」してきた歴史的経緯を、ヴァルドルフ学校運動の関りに着目しつつ解明することにある。この目的を達成するため、研究期間2年目の令和元年度は、ヴァルドルフ学校運動の本拠地である南西ドイツのバーデン・ヴュルテンベルク州の私立学校法制の歴史的展開をヴァルドルフ学校運動との関連から研究した。研究の結果として得られた主な知見は次の2点である。 (1)バーデン・ヴュルテンベルク州は、ナチズム崩壊後の連合国占領下で設置された南西ドイツ地区の3州が1952年に統合して成立した。このバーデン・ヴュルテンベルク州憲法(1953年11月)の制定過程、特にその教育条項をめぐる憲法制定会議の議論を分析することにより、ボン基本法が希求する自由で民主主義的な社会形成に果たす私立学校の重要な位置と役割が確認されていたことを明らかにすることができた。 (2)バーデン・ヴュルテンベルク州では、2017年9月に私立学校法の条項の重要な改正があった。この改正は、2015年7月の同州憲法裁判所判決により指示されていたものであり、この訴訟は2005年に同州の一つのヴァルドルフ学校が私学助成をめぐって同州政府を相手取って訴訟を提起したことが発端であった。2015年の同州憲法裁判所判決では、同州私立学校法が同州憲法に違反しており、州憲法の趣旨に即した改正が必要であることを命令した。この判決を受けて改正された私立学校法により、私立学校は最大で必要経費の90%までの公費助成が支給されることとなった。研究を通して、判決および私立学校法改正を貫徹するものとして、私立学校は価値多元主義的な社会の形成に寄与する重要な役割を果たすとの認識であったことが明らかにされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の研究実績の概要に記述の通り、当初予定していた研究計画はほぼ予定通り実施できたことによる。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度の研究実績を踏まえ、今後は以下の2つの研究計画を実施する形で研究目的の達成を目指す予定である。 (1)1994年3月の連邦憲法裁判所判決で結審した私学助成をめぐる裁判闘争の分析考察を行う。この1994年連邦憲法裁判所判決は、いわゆる1987年の「私学助成判決」の理念を基本的に継承して、連邦憲法裁判所として私学助成の基本的方向性を提示したものとして重要であり、またヴァルドルフ学校(シュタイナー学校)が原告となり、自由ヴァルドルフ学校連盟および自由学校協議会が支援した訴訟としても重要である。1994年憲法裁判所判決に至る経緯と同判決の内容とその根拠の分析、同裁判闘争における自由ヴァルドルフ学校連盟および自由学校協議会の関与の内実、同判決内容の各州私立学校法制への影響などを分析考察する。 (2)戦後の憲法理論および教育法理論における私立学校の位置づけの歴史的展開に関する分析考察を行う。ヴァルドルフ学校(私立学校)を中心とする私立学校および自由が功協議会会の活発な活動、特に私立学校の権利拡大を志向した裁判闘争の結果、幾多の重要な連邦憲法裁判所および連邦行政裁判所判決が出され、また私立学校法も改正されてきた。では、こうした動向に伴い、憲法理論および教育法理論は如何なる展開をしたのか、分析考察を行う
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次年度使用額が生じた理由 |
学部長の職務を兼務しており、その関係で当初予定していた研究のための出張が実施できなかったことから、次年度使用額が生じることとなった。
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