研究課題/領域番号 |
18K02357
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
貞廣 斎子 千葉大学, 教育学部, 教授 (80361400)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 教育財政 / 財政原則 / 資源配分 / 学校ネットワーキング |
研究実績の概要 |
本研究は、教育に関わる財や資源の負担・調達・配分・供給の構造を巡って、多様なあり方の混在と再編の動態的状況を明らかにし、財や資源の負担・配分原則及び方式に関わる社会的・政治的決定を支援する知見を得ることを目的とする。2019年度は、1)2018年度のスウェーデン調査等の研究成果の発信、2)イングランドのマルチアカデミートラスト(MAT: Multi-Academy Trust)を対象とした教育財政システムに関する調査研究を中心的に行った。 まず、1)については、日本教育行政学会第54会大会(埼玉大学)にて、研究報告(社会経済的背景に配慮した教育資源配分の可能性:スウェーデンの配分システムを基に)を行った。スウェーデンの教育費は、教育へのアクセスの平等性と児童生徒の前提条件の相違を考慮する追加的教育保障を原則とする等の原則で貫かれており、コミューンから各学校に配分される教育費は、均等配分に相当する基礎的バウチャーと必要配分に相当する平等保障費から特定の算出式によってされていること、更に算定式には統計スウェーデン(SALSA)が積極的に活用されている点を中心的に報告した。 次に、2)イングランドのMATを対象とした教育財政システムに関する調査研究では、教育省の担当者へのインタビューと、実際のMATの財務担当者のインタビュー調査を行った。その結果、MATへの配分には、パーヘッドの配分方式が適用され、一律の配分が行われているものの、同時にPupil Premiumという学校特別配当予算も配分されており、基礎配分と必要配分の組み合わせ予算配分となっていることが裏付けられた。加えて、MATは、学校同士が近接していること、同じ学校種であること、財務担当者の専門性が高いこと、これらを統括する統括校長の高い教育的識見とリーダーシップが求められることなどが必要条件であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの感染拡大状況を受けて、複数のフィールド調査やデータ収集が困難な状況となっている。具体的には、2020年2月~3月にかけて実施する予定であったオーストラリア調査、イギリスの追加調査が相手方の辞退で無期延期となった、加えて、国内においても、家計の私費負担状況を把握するためのアンケート調査が、学校休校措置で中止となった。本研究成果を報告する予定で、査読も通過していた国際学会(世界教育学会:WERA)も、スペイン開催であったため延期となり、今後の状況にもよるが、研究計画自体も大幅に見直さざるを得ない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの感染拡大状況を受けて、複数のフィールド調査やデータ収集が困難な状況となっていることを受けて、現時点で収集できている資料やデータの分析の精緻化によって、次善の方策を取るとともに、フィールド調査や追加データ収集の必要がない研究、具体的には、我が国における小中ネットワーキングシミュレーションの研究に軸足を置いて研究を進める。ただし、新型コロナウィルス拡大状況下の学校で、遠隔授業などの浸透が見込まれることから、ネットワーキングとともに、非対面型の新しい学校を想定した学校ネットワーキングの在り方についても、検討を始めることにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外フィールド調査が中止となったため。
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