研究課題/領域番号 |
18K02357
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
貞廣 斎子 千葉大学, 教育学部, 教授 (80361400)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 社会経済的配分 / Pupil Premium / エビデンス / ワイズスペンディング / 教育達成 |
研究実績の概要 |
2021年度は、英国の公的文書や既存論文等を資料に、社会的経済的背景に配慮した教育資源の傾斜的配分であるPupil Premium(以下、PPG)システムの概要について、以下4つの観点から分析し、そこに通底する政策規範について、比較制度論の枠組みを援用し検討を行い、その成果を論文にまとめた。 まず、①英国においても、不利な背景に関連する学力格差の是正が重要な政策課題として掲げられ、基礎配分とは別に、不利な子どもへの追加的配分が明示的に行われており、資源の投入という側面からも、社会的公正の実現が強く意識されていることがわかった。次に②効果の測定が、PPG計画/執行スキームの中に義務として位置づけられ、外部評価・公開の対象となっていることに特徴が見出せた。関連して、③児童生徒情報管理システム・MIS(Management Information System)と成績管理ソフト(SIMS等)が広く普及しており、学校が主体的に、データ・ファクト・エビデンスを基にして、日々の状況分析や教育活動の効果検証ができる様に支援がなされていた。更に、④対象者の設定も、配分式も、「シンプル」で一律であり、配分の結果も学校別に公開され、透明性が担保されたシステムとなっていた。 一方、スキーム全体に効率化圧力が通底しており、エビデンスの活用は、教育効果を効率的・効果的に獲得することを最優先として行われていた。加えて、これらの政策が、市場原理政策と、テストスコアによる学校評価の実施と公開とともに行われているため、子どもや学校の評価の一元化をより先鋭化し、学校環境をより競争的にする可能性があることが示された。一見、社会的公正の実現を目的としている制度も、そこで優先されている行動選択・慣習に目を向けると、第一のプライオリティが効率性にあることが見えて来る実例がここに見出せた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍のため、主に学校を対象としたフィールド調査ができていないため。
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今後の研究の推進方策 |
感染状況が落ち着き次第、スウェーデンと英国の学校でのフィールド調査に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍が継続し、スウェーデンへ・英国でのフィールド調査が出来なかったため、次年度使用額が生じた。 今後は、先方からの調査受け入れ許可が下り次第、両国での学校フィールド調査を行い、研究知見の精緻化を行う計画である。
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