研究課題/領域番号 |
18K02361
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
藤田 公仁子 富山大学, 学術研究部教育研究推進系, 教授 (50322970)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 生涯学習 / 人材開発 / 学習成果活用 / 学習支援 / 社会教育 / 大学開放 / 大学拡張 / 生涯学習プラットフォーム |
研究実績の概要 |
本研究はこれまで、地域社会において、ICTなどの学習活動を支援するシステムの技術的発展をふまえた、地域住民が生涯学習の活動を成果活用まで展開するシステムづくりの意義・必要性を実践的・実証的に明らかにしてきた。 令和元年度は、学習成果活用を前提とされた講座に参画し実証的に調査しつつ、相談機能を有し、学習者を成果活用へ導くことができる学習成果活用支援スタッフの育成プログラムについて、既存の社会教育職員養成カリキュラムを精査した。そこで求められる学習支援スタッフ像(必要とされる専門性)を実証的に探っていくと、コーディネート力とファシリテート力を備え、高度なメンター機能のスキルが必要であることが明らかになった。そうした人材を育成するため、令和2年度から実施される社会教育主事、社会教育士養成プログラムの可能性を視野に入れた研修プログラムを開発し、社会教育職員の研修の機会に試行評価した。e-ポートフォリオを活用した学習支援システム化については、生涯学習機関、社会教育施設で成果活用の実態を把握しつつ、試行の調整に入っている。 茨木市では、平成30年から、相談機能を有した、生涯学習機会の提供から学習成果活用までを結びつける講座を実施しており、その評価分析中であるが、生涯学習プラットフォームとしての機能を探るための必要なファクターを導き出すことができている。 オーストラリアのクイーンズランド大学では、大学博物館の大学開放の実践を調査している。curator養成カリキュラムにとどまらず、e-ポートフォリオを活用した学習支援、将来的な地域活動の人材を育成していく仕組みについての先駆的実践がある。高等教育機関が、将来を見据えた生涯学習プラットフォームの役割を担うことができる仕組みづくりが実施されている。大学開放、キャリア教育に関わる学習・能力開発も含めて研究する上で、多くの示唆を得ることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和元年度は、平成31年度調査した「生涯学習プラットフォーム」の意義・可能性を踏まえ、「生涯学習プラットフォーム」の有する機能の中でも、相談機能と学習成果活用支援スタッフ育成研修プログラムの開発について、既存の育成プログラムの実態を調査・把握した上で取り組み試行した。また、e-ポートフォリオを活用した学習成果支援のシステム化については、生涯学習機会を提供している機関における試作および生涯学習相談機能を有する支援プログラム開発までを目標とした。 富山県、北海道、岩手県、大阪府の生涯学習機会を提供している機関で実施している学習成果活用を視野に入れた学習支援スタッフ育成プログラムや、高等教育機関で実施している履修プログラムの仕組みについて、相談機能から成果活用までの支援の状況、研修内容、体制を把握した。研修プログラムの試行については、実施する方向で関係機関と調整していたが、一部のみ実施となっている。 茨木市では、平成30年から、学習成果を地域課題解決に活かす取り組みや実践への支援、相談機能を有する講座を試行しているが、学習成果を活用できる場を地域で紹介・提供していく相談業務には担当スタッフの経験や力量が問われることが多い。そのため、学習支援スタッフの今後のスキルアップ研修、学習支援プログラムの開発が必要となっている。このような人材育成に必要なプログラムの開発、試行を実施し、さらに新たな相談機能を有した「生涯学習プラットフォーム」を実証研究として明らかにしていく途上である。 クイーンズランド大学の調査では、本研究のテーマである新たな生涯学習プラットフォーム機能の実践について、国内の大学開放の状況と比較する視点から調査を行った。 以上は日本社会教育学会で報告しているが、その他1月~3月に予定していた調査や報告準備を進めていた研究会等が、新型コロナウイルス感染症拡大のため中止するに至った。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度は、本年度、新型コロナウイルス感染拡大の影響のため実施できなかった調査、講座等の実証研究を、環境が整い次第、順次、最終年度の計画と調整しつつ当初計画に沿って推進していく。本年度は、国内外の調査を実施しているが、本研究のテーマでもある「新たな生涯学習プラットフォーム」のモデル化を図るためにも、追加調査と先進事例として取り組んでいる研究機関との情報交換を行い、将来的な課題を明らかにする。また、オーストラリアの大学博物館と、大学開放セクションが抱える生涯学習機会から成果活用までのシステムづくりに内在する課題を共有しながら、国内のシステムづくりに反映させていく。e-ポートフォリオを利用した学習支援プログラムについては、本年度開発したものを研究協力者とともに活用しながら、より使いやすいシステムを開発していく。これらの成果は、本研究最終年度の総括として取り纏め、引き続き学会発表、研究報告といった形にするよう取り組んでいく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、1月~3月に当初計画していた調査や研究報告の準備を進めていたが、新型コロナウイルス感染症拡大のため、実証研究のための講座やプログラムおよび研究会が中止になり、調査も実施できない状況になった。そのため、本年度実施内容については、環境が整い次第、順次最終年度の計画と調整しつつ、当初計画に沿って実施していきたい。 具体的には、海外ではオーストラリアのブリスベンなど、国内外の社会教育施設、生涯学習センター等大学開放セクションの先進的な事例調査も継続して実施したい。国内では、先駆的な生涯学習プラットフォームと学習者のネットワーク構築、e-ポートフォリオの学習支援、それぞれについて、自治体、研究協力団体等と協力してモデル化を図り、実証していきたい。さらに、当初の計画に基づきフォローアップ調査を行い、試行評価、検証、総括したうえ、その成果を大学開放、社会教育関係の研究会および学会で報告し、さらに報告書を作成する。
|