2021年度は、身体接触を伴う運動「組ずもう」の教育現場への普及活動を行った。 具体的には、COVID19の感染を考慮し、実技を伴わない講義形式で、幼稚園・小学校における研修会及び体育研修会の場において、これまでの研究成果をプレゼンとしてまとめたものに、論文「身体接触を伴う運動”組すもう”が学級の集団凝集性に及ぼす影響(筒井ら,2020)」及び体育科教育関係の雑誌に掲載された寄稿文を加えた資料をもとに行った。 研修会では、特に「児童は身体接触によって相手の身体への気づき(発汗、体温、心臓の鼓動、息づかい、筋肉の緊張・弛緩など)が促され、その身体への気づきから、互いの気もち(「S君の心臓が“ドキドキ”と速くなっていて,“絶対に勝ちたい!!”“負けたくない!!”という気もちを感じた」「M君はすごく体が熱くて,その分練習してきたということを感じた」など)を推察し合っていること、この推察した相手の気もちは、過去の自分の同一または類似した経験の際に感じたことから類推したものと考えられ、したがって、そこには気持ちの共有が生まれ、それが相手への共感的な心情を生起させ、結果、集団凝集性が高まることにつながったと考えられること」に焦点を当てて実施した。 COVID19の感染により、体育授業に限らず、日常生活からも「身体接触」が消えつつある状況の中、「身体接触」の意義を発信した研修会では、参加者それぞれに、体育固有の「身体接触」の教育的効果を問い直す機会となった。研修会の参加者からは、「身体接触を失った体育は,児童・生徒から人への信頼を形づくる経験を奪うということを意味しているのででないか」「身体接触を拒絶した体育は、人間教育の教科といわれる独自性とその存在意義を自ら放棄することを宣言していることになるのかもしれない」といった声が聞かれた。
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