研究課題/領域番号 |
18K02369
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
安部 恵祐 大分大学, 全学研究推進機構, 助教 (10535652)
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研究分担者 |
鈴木 雄清 大分大学, 高等教育開発センター, 准教授 (00333253)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ルーブリック / イシュー / アクティブラーニング / eポートフォリオ / コンピテンシー / ベンチャー企業 |
研究実績の概要 |
第1フェーズ「教育評価」における複数評価者間のズレの傾向と、教員・企業評価者のズレ(学生への期待値)を観測するための試作ルーブリック開発を主目的に研究を実施した。第2フェーズのeポートフォリオ運用は導入先システムの検討をした。 研究1として、企業の要望(ニーズ)等からのルーブリック開発を試みている。初年度キャリア系データベース等より、企業規模・地域などで分類し、「求める人材像」や「研修」の分析を行い、九州圏内企業等約40社にヒアリング調査を行った。そこから、イシューの部分を探るため、新規に26社にヒアリングを実施した。「主体性」を求める反面、日本特有の「謙虚さ」を求める企業が多いなど、地域性などを加味しながら調査した。 研究2として、eポートフォリオの設計を行った。企業・教員で評価システムを用いて簡易なシステムが実行中である。ポートフォリオ導入先の選定を行った。 研究3として、現在までに実施している産学官連携教育の評価者のズレを分析した。初年度の研究から評価ズレは、職種・役職ではなく、パーソナリティに依存することが示唆された。評価者の性格を事前に掴み、ズレ幅を減らすか、もしくは、ある程度ズレを許容し、評価者を複数配置するかの検討を行った。評価者が複数いた場合でも、ルーブリックに従った場合、補正できないズレも確認された。そのズレに対応するルーブリック自体の補正や柔軟性も求められた。 また、上記の補足として、文献調査を行った。ダイバーシティ思考、ギグワーク、ホモデウス、チェンジメーカー等の基礎となるコンピテンシーの収集とアクティブラーニング授業への試験的組み込みを行っている。さらに、近年の事例収集として、ベンチャー企業等の事業活動に同行し、製品開発・市場開拓・B2B交渉等の参与観察を行い、コンピテンシーの収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1のデータベース分析や初期ヒアリング解析の結果、分野・職種別の表層上の求める人材像やスキルが抽出された。そのことを踏まえ、2度目のヒアリング実施し、各会社のイシューレベルまでの対応策・コンピテンシーの収集を行った。そのため、1度目のヒアリングの際にはなかったイシューも多く抽出され、企業の時流対応の早さを感じた。時代を反映したイシューの場合、大学側に即応できるリソースがない場合が多い。また、想定内ではあったが、時間経過により、解決策も追従され、昨今はAIやIoT機器で代用されているので、そのことを踏まえたクリティカルイシューに連結したルーブリックの開発を行う必要があるとの知見を得られ、方向性の再確認ができた。ただ、COVID-19の影響で2月からヒアリングを抑制したため件数は稼げていない。 研究2のeポートフォリオ開発により、複数業種共通のコンピテンシー対応の産学官連携ルーブリックは数種類用意できた。また、COVID-19の影響で教育システムの活用度が上がりつつある。教育システムの安定と使用者の運用レベルの向上などを見据えつつ、eポートフォリオへのシステム導入を検討する。 研究3として、現在までに実施している産学官連携教育の評価者のズレを測定できた。評価時の評価項目を時流に合わせて見直したり、評価者(兼アドバイザー)を増やしたり、評価者の組み合わせを調整することで、時代に適合した有能な人材創出教育ができる可能性を示唆した。 また、最先端事例としてベンチャー企業等に同行し、参与観察を行い、最新の産学官金に対応したビジネスコンピテンシー等の現場情報を収集した。
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今後の研究の推進方策 |
現在収集した情報から試作ルーブリック等を開発し、授業等で試行する。2020年度の授業も1授業追加し、そこで、新規のルーブリックの運用を行う。可能な状況ならば、ベンチャー企業等の参与観察を引き続き行い、最前線のコンピテンシーを収集する。また、COVID-19の影響を鑑み、オンラインのヒアリングシステムを形成し、行政・企業とのヒアリングの場を確保を目指す。 研究1のデータベース分析やヒアリング解析を行い、時流・未来に即したコンピテンシーや新しい求める人材像を更新する。また、類似の視点で活動している大学教育情報なども収集し、可能ならば交流し新しいネットワークを形成を目指す。 研究2のeポートフォリオ開発は、他大学と一部ルーブリックの共有化ができているので、最新コンピテンシーを踏まえたルーブリックの改修やシステム導入等を検討する。 研究3の評価者間のズレは、評価者ユニット形成にて補正はできるが、昨今の事情より評価者が複数集まらなかった場合の対応(オンライン対応)ができないか検討する。 また、COVID-19の影響により、働き方の効率化・本質化が露呈し始め、形式だけの非生産性の行為(やっている感業務:名刺交換のための挨拶回りや定時対面会議等)の見直しがされている。このような価値観の変容項目も可能ならば収集しつつ、分野や業態で特徴がでるという仮説のもと、時流対応度なども新たに分析可能か検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担者とともにeポートフォリオ導入先のシステムの選考を行っていたが、次年度にならないと不明な点が発生したので延期した。また、COVID-19の影響により、ヒアリング活動等を抑えていたため、旅費等が余っている。そのため、2020年度はオンラインヒアリングシステムの充足を行う予定である。
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