研究課題/領域番号 |
18K02374
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研究機関 | 人間環境大学 |
研究代表者 |
宮田 延実 人間環境大学, 看護学部, 教授 (10742520)
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研究分担者 |
折出 健二 人間環境大学, 看護学部, 研究員 (20109367)
森川 英子 奈良県立医科大学, 健康政策医学講座, 研究員 (20413388)
松原 紀子 人間環境大学, 看護学部, 准教授 (70760289)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生まれ変わり / 心理的危機 / 小学生 / 自死 / 仏教思想 / タイ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「生まれ変わり」思想が、いじめや厳しい叱責などにより、心理的危機に陥った子どもに与える影響やその背景について分析し、その支援策を検討することである。 そこでまず、生まれ変わり思想を持つ子どもと持たない子どもの心理的危機の状況や希死念慮などを量的調査によって比較し、支援策を検討した。その結果、生まれ変わり思想をもつ子どもは、いじめに遭うことに敏感に反応し、死にたい思いを抱きやすい傾向のあることが明らかになった。しかし、彼らが心理的危機に陥っても、行動や態度には表れにくい傾向があるので、大人は注意を向けて察知する必要がある。一方で、危機から脱するためには、自尊感情の高揚が有効であることが明らかとなった。 次に、わが国の生まれ変わり思想を抱く子どもには、輪廻転生などの断片的な仏教思想の影響が認められることから、仏教信仰国のタイとわが国との比較を通して、生まれ変わり思想が形成される背景について検討した。その結果、日本の子どもは、鬼や地獄を持ち出す養育者のしつけにより、幼い子どもは恐怖感をもって死後世界を想像すると考えられる。しかし、年齢が上がるとその後に入手するメディアや周りからの情報から、死後の世界ヘの想像、願望、希望が膨らむと考えられる。他方、タイの子どもは、善行を奨励する仏教思想が幼児期から内面化され、死後世界を想像すると考えられる。たとえば、善行によって救われるものの、善行が少ないと来世は動物や昆虫になり、善行が多ければ、来世はよりよいものになり、効力感は高まる。いずれにしても、生まれ変わるために自死を願うことは考えにくい。しかし、日本では、明確な宗教観をもつ人々は少なく、単に願えば、人として生まれ変わりができるという思想も現れたと考えられる。各自の都合のよい解釈がなされ、メディア等の影響を受けやすいといえる。
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