研究課題/領域番号 |
18K02375
|
研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
林 隆紀 佛教大学, 社会学部, 准教授 (20264806)
|
研究分担者 |
長谷川 精一 相愛大学, 人文学部, 教授 (40269824)
奥野 浩之 同志社大学, 免許資格課程センター, 准教授 (80552067)
沼田 潤 相愛大学, 人文学部, 准教授 (40735289)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 大気汚染 / SDGs未来都市 / 共生 / 地球環境 / グローバル化 |
研究実績の概要 |
本研究は、専門の異なる研究者の協働により、主体的な市民育成を目指す大学教育プログラム開発を目的としている。3か年計画の2年目にあたるR1年度は各領域において効果的なプログラムの検討を継続しながら、共同研究可能なテーマに適した題材検討を行った。研究代表者はこれまでのグループの議論に基づき、「環境」「歴史」「法制度」「グローバル化」のキーワードを含む共通課題を抽出した。ここで我が国において負の歴史である“公害”問題に着目し、共通テーマ化の可能性を探った。その結果、先に挙げた4つのキーワードを活かすためには、負の歴史から学び、次の一歩を踏み出している事例を調査研究し、コンテンツ作成につなげることが重要であると結論付けた。そこでテーマを“大気汚染”に定め、調査研究対象として北九州の事例を選んだ。北九州市はかつて大気汚染の町として知られていたが、その後の官民を挙げた努力の結果、現在ではSDGs未来都市として、日本の環境政策を地方からけん引する存在となっている。さらにH30年 にはOECDにより、アジア地域初となる「SDGs推進に向けた世界のモデル都市」に選ばれ、グローバルな視点においても注目されている。この北九州市には地方自治体には珍しく、環境教育の啓発・普及を目的とした「環境学習課」が独立設置されている(一般には環境全般を扱う課の中に問い合わせることがほとんどである)ことから、本研究グループ全員での現地に聞き取り調査を計画し実施した。聞き取り調査では総務課、環境学習課の担当者から北九州市の環境先進都市化への取組、ならびにその普及方法について詳しく話を聞いた。また主要学習施設の一つである環境ミュージアムの見学を行い、フィールドワークと学習効果の相乗効果についても検討する材料とした。以上、2年目は共通研究テーマの決定と合同調査に主眼を置き、最終年度のコンテンツ化への研究を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
各研究者の専門領域の深化にあわせて議論を重ねて共通テーマを設定し、R1年夏に北九州市役所内環境学習課への共同調査を実施することができた。しかしR2年明けに予定していた共同実地調査の深化、ならびに比較対象として検討していた単独実地調査がコロナウィルス問題の影響で実施が不可能になり、かつグループ間での研究議論の進展も滞ることになった。本研究において、e-ラーニングコンテンツ作成ならびにその評価を大きな成果と位置付けているが、コンテンツ素材の流れについての議論までは進められたものの、具体的な草稿を作成するところまでには至らず、次年度への持ち越しとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の研究目的として、①適切な論点の把握、②正確な知識の習得、③体験型学習での気づき、④有効な議論と意思決定、を通じて、学習者の資質向上の自覚へとつながる仕組みを評価することを目的としてきた。しかしコロナウィルス問題の長期化による社会の自粛が続く中、学習環境も激変し、今後も従来の学びの環境、研究の環境の回復は当分見込めない。そのため本研究の一つの柱ともいうべきフィールドワーク手法とe-ラーニングコンテンツ手法との融合による相乗効果研究については再検討を余儀なくされると考える。ただR1年度成果において作成すべきe-ラーニングコンテンツの共通テーマは明確になっていることから、まずは各分担においてコンテンツ草案を作成し、次に全体をまとめた際の整合性や学習の流れを検討することを第一に進めたい。特に研究代表者はe-ラーニングコンテンツを使うことが学習者の理解度の向上にどのように寄与するかを見極められる仕組みを検討すること、また社会学で重要視される実地体験の有無が与える学習者への影響について検討することを一つの目的として今後の研究の位置づけを考える。
|
次年度使用額が生じた理由 |
R1年度に計画していた第一次コンテンツ作成が後ろ倒しになり、最終年度にずれこんだため、これまでの経費を繰り越して使用する。また今後の学習環境、研究環境の変化をいかに捉えて本研究を意義深いものにするかを注意深く検討し、主にリモート学習環境整備と学習効果の関連も踏まえた研究に資する物品に対し研究費を計上したい。ただし今年度後半に、限定的にでも実地体験が可能な状況が来れば、その状況に合わせた実地調査等の対応ができることを念頭に置いて使用計画を立てる予定である。
|