本研究課題の最終年度にあたって、最終報告書のとりまとめに向けた研究活動を行ったした。具体的には、2021年6月に第1回研究会、2022年2月に第2回研究会を実施し、各国の「マネジメント及び学校運営事務の一覧表」を完成させるとともに、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、中国、韓国それぞれの比較分析を通じてそれぞれの特徴や全体の傾向について検討した。 上記の検討により、学校運営事務は業務内容はもとより、それを担う人員、特に日本では「事務職員」と捉えられる人員の概念が各国によって多様であり、学校事務を担う体制の単純な比較が困難であることが改めて認識された。と同時に、各国の学校運営事務体制がどのような要因によって規定されているのか、すなわち学校運営事務体制の背景となる教育行財政制度や教職員の人事制度、学校経営理念など、多岐にわたる規定要因に関する検討の必要性が示唆された。特に、地方や学校に付与された学校運営に係る権限の差異は重要であり、今後の国際比較研究における研究枠組みの策定の際に十分に考慮する必要性が確認された。 以上のような議論を踏まえつつ、調査で得られた知見を各国ごとにまとめ、最終報告書を作成した。2019年度後半以降、コロナ禍のために現地調査を実施することができず、その点では各国の学校運営事務のあり方の実際を明らかにするという、当初の目的を十分に果たすことができなかった面もある。しかし、「マネジメント及び学校運営事務の一覧表」など、各国の学校運営事務を比較する共通の枠組みを提供することができた点が大きな意義である。
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