本研究の目的は教職の社会的認知(アクレディテーション)の在り方を国際標準への近接と自律を鍵概念として検討することであった。昨年度までの研究成果から、近接と自律に関し、アクションリサーチ型の学びと教職の社会的認知の改善が重要であると捉えるようになり、ウェルビーイング論、教師のつながりとしてのソーシャル・キャピタル、価値―期待モデルに基づく学校経営、の三観点の有機化を図ることとした。ソーシャル・キャピタルは、OECDウェルビーイング論を構成する要素の一つである。 最終年度の令和5年度は、教師のつながりとしてのソーシャル・キャピタルについて、「外部性」の実証研究に焦点をあて、「地域社会縮減時代の教師ソーシャル・キャピタル~宮城教育大学附属小学校における地域学習教材開発・改善と広がり」として論文化した。「外部性」とは、ソーシャル・キャピタル研究の泰斗であるロバート・パットナムの定義に拠る。パットナムは、ソーシャル・キャピタルについて、「個人間のつながり、すなわち社会的ネットワーク、およびそこから生じる互酬性と信頼性の規範」であり、それはまた、「『外部性』を有していてコミュニティに広く影響する」としている(パットナム2006)。 この「外部性」は実践の深化・価値の共有と一体的である。対象とした事例における実践の深化として、教師たちの内発的動機づけを高める学校経営の下、カリキュラム開発としての川探検が、「子ども自身が問いを深め、学びの世界を広げる」という教師たちの価値とともに、型となって常態化していた。川探検の成果と土台となっている考え方は、教職大学院の授業を介して公立のX校に伝播し、学校の文脈に根付く活動へとつながった。 この他、教職大学院院生・共同指導者たちとともに、院生の勤務校におけるサーバント・リーダーシップの発揮について、2件の共著論文にまとめた。
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