研究課題/領域番号 |
18K02387
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
古田 和久 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (70571264)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 社会階層構造 / 学歴と職業 / 教育機会の格差 / 奨学金制度 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,日本社会の階層構造がどのように形成されているかを精緻に分析したうえで,教育における格差の現状および格差のメカニズムを明らかにすることである。 そのための基礎的な分析として,平成30年度は,社会階層の中心的な変数である教育と職業がどのように関係しているのか,またその関係は時代を通してどのように変化してきたのか,などについて検討した。具体的には,2015年までの「社会階層と社会移動全国調査(SSM調査)」データの蓄積を用い,教育と職業の関連の長期的趨勢を検討した。その結果,次のことが明らかとなった。第1に大卒者は専門職従事率が維持されるなど,その職業構成は安定的であったのに対し,高卒者は事務職が減少し熟練職や半熟練・非熟練職に集中するなど変化が大きかった。第2に,大卒者においては1961-70年生まれ以降,職業キャリアの中盤で管理職への到達が困難化した。高卒者は職業キャリアの初期段階からブルーカラー職に就く傾向が顕著になった。第3に,学歴間の相対的格差は出生コーホート間で維持されていたが,その内部では若年時の学歴間格差が1960-70年代の教育拡大を経験した世代で縮小していた。ただし, 1990年代以降に大学進学を迎えた世代ではそうした学歴差の縮小はみられなかった。 次に,高等教育進学における格差を検討するために,高校生とその母親を対象とした調査(「高校生と母親調査,2012」およびその追跡調査)を用い,複数の出身階層変数と進学および奨学金利用との関係を分析した。その結果,文化資本が多く経済資本が少ない階層において奨学金を利用した進学が多い傾向にあることなどが明らかとなった。 これらの結果をもとに,研究会等での報告を行うとともに論文の執筆を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究会等での報告やそれを踏まえた論文執筆・発表などを行っており,概ね当初の計画通り進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでSSM調査データの分析を中心として,教育と職業との関連などについて検討してきた。今後は,他のデータの分析にも着手し,社会階層構造の変容を追うとともに,そのことが教育機会の不平等にもたらす結果を吟味し,格差のメカニズムの実態に迫る。研究成果については学会で報告し,論文の執筆を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定額との差額が生じたのは,物品購入額が予定をやや下回ったこと,学会報告を次年度に追加したために支出を抑えたことによる。したがって,次年度は学会報告および社会階層と教育関連の文献の購入のために研究費を使用する予定である。
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