本研究は,教育における出身階層間格差の実態とメカニズムの解明を目的としたものであり,複数の社会調査データから,社会階層構造および教育達成に対する家庭の社会経済的背景の影響を分析した。その結果,高学歴化が進展したにもかかわらず,学歴間の職業差は維持されている一方,大卒者の規模が増えたため大卒者の管理職従事率は減少した(ただし専門職従事率は維持された)こと,などが分かった。他方,1990年代後半以降,貸与奨学金を利用した高等教育進学者が増加したが,それでもなお出身階層間の進学格差は残されており,教育達成の過程を考慮しても,貸与奨学金が格差の縮小に必ずしも直結するものではないことが明らかとなった。
|