研究課題/領域番号 |
18K02393
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
尾崎 公子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (90331678)
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研究分担者 |
肥後 耕生 豊岡短期大学, その他部局等, 講師(移行) (00791196)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 小規模校 / 韓国 / マウル教師 / 学校自律化政策 / 公募校長 / 小さな学校教育連帯 / 人口減少地域 / 地域づくり |
研究実績の概要 |
人口減少社会を迎え、持続可能な社会構築を担う学校モデルの開発が社会的課題になっており、地方創生政策の一環として小規模校の活性化事業が打ち出されるようになった。だが、新たな学校モデルを担う教職員像については十分な研究蓄積がない。 本研究は、先行事例である韓国の取組みから日本への示唆を得ることを目的とする。韓国政府は、日本と同様学校の小規模化が進む中で、学校統廃合への財政支援と同時に、学校自律化策と連動させた小規模校活性化策を講じてきた。一方、小規模性が、構成員の自発的な参加、協力、合意形成が可能となる要件だと捉えて、小さな農村の学校の取組みをバックアップする草の根のネットワークが築かれている。その代表的なネットワークとして小さな学校教育連帯がある。連帯は、学校自律化策によって導入された公募校長・招聘教員制度を利用して、小規模校に異動する方策を打ちだしている。本研究では、そうしたネットワーク等に参与して、人口減少地域の学校づくりと共に地域づくりを担っているマウル教師と呼称されている教師の存在に着目し、活性化事例を担う主体と主体を支える組織分析を主題としている。 2018年度における研究実績は以下のとおりである。 1.韓国教師運動に関する先行研究の検討:全国教職員労働組合(全教組)運動、オルタナティブスクール、小さな学校教育連帯、革新学校など、教育改革を志向する組織や運動に関する先行研究を検討して、小規模校活性化に関わる教員たちの組織的背景について考察を進めた。 2.現地調査:次の聴き取り調査を実施し、マウル教師やマウル教師を支える組織、運動、政策に関する分析を進めた。①小さな学校教育連帯加盟校であるサンウ小学校、チャンスン小学校のマウル教師たち ②完州マウル教育共同体の実践に関わる教職員、地域住民 ③全国教職員組合(以下全教組)幹部 ④教育部学校革新政策課の研究員。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、小規模校活性化事例を担う教職員と教職員を支える組織や運動に関する背景要因を分析し、実践を支えるネットワーク、仕組み、方法等を明らかにすることにある。そのために、1.韓国教師運動に関する先行研究の検討 2.公募校長、招聘教員への聞き取り調査 3.マウル教師への聞き取り調査 4.日本の比較事例の分析を進めていく計画である。 2018年度は、研究計画に基づき、1,3を中心に研究を進めた。1については、教育改革を志向する組織や運動に関する先行研究を収集して、基本となる文献の翻訳作業を進め、小規模校活性化に関わる教員たちの組織的背景として全教組との関連を把握することができた。3については、マウル教師への聴き取り調査を実施し、経歴、所属団体、教育観、地域観、地域活動の中身についても聴き取り調査を実施し、学校づくりに止まらず、地域づくりに関わる動機や背景とともに、実践を支えるネットワーク、仕組み、方法等を明らかにするためのデータを収集することができた。また、全教組幹部に、公募校長・招聘教員についての見解、小さな学校教育連帯との関係等について聴き取りを行った。さらに、教育部革新政策課の研究員にマウル教育共同体事業に関する政策動向、地域観に関する聴き取りをすることができた。 以上、基本的資料収集、マウル教師、全教組、教育部への聴き取り調査を進められたことから「おおむね順調に進展している」との達成度評価ができる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策として、小規模校の校長や教員に自ら志願する動機や背景とともに、そうした個人を支えるネットワーク、仕組み、方法等を明らかにするために、①公募校長、マウル教師への聴き取り調査 ②小さな教育連帯の個人会員を対象とする質問紙調査を予定している。 ①については、忠清南道洪城郡洪東面にある洪東中学校を対象としたケーススタディを予定している。海外共同研究者であるミン・ビョンソン氏は洪東在住者で典型的なマウル教師であるが、2019年3月に洪東中学校の公募校長に就任した。洪東は、人口約3500人の小さな農村だが、有機農業と協同組合の先進地として知られた地域であり、洪東中学校では、そうした地域資源を活かす取組みを行って、小規模校の活性化と共に地域づくりにも参与してきた。洪東にはミン氏以外にもマウル教師が在住しており、公募校長、マウル教師に関する聞き取り調査地として最適だと判断し、研究対象として選定した。 ②については、経歴、所属団体、教育観、地域観などを質問項目とし、小規模校活性化に関わる教職員の背景要因の解明を図る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額の949円は、旅費の端数である。2019年度の助成金の使用計画として物品代を5万円計上しているが、残額分を併せて50949円とする。
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備考 |
http://www.u-hyogo.ac.jp/shse/ozaki/
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