研究課題/領域番号 |
18K02393
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
尾崎 公子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (90331678)
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研究分担者 |
肥後 耕生 豊岡短期大学, その他部局等, 講師(移行) (00791196)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 人口減少地域 / マウル教師 / 韓国 / 内部型校長公募制 / 革新学校 |
研究実績の概要 |
本研究は、授業改善から学校改革、さらにマウル(地域)づくりを志す韓国のマウル教師の存在に着目し、実践を支えるネットワーク組織・運動、制度的背景を考察して、主体的に人口減少地域の学校と地域づくりに参与する教員を後押しする諸条件を明らかにすることをねらいとしている。 本研究では、制度的要因として、一般教師が志願可能な内部型校長公募制に着目している。2020年度は、海外研究協力者に依頼し、忠清南道教育庁から校長公募制の現況データを入手するとともに、同道の内部型校長(2021年3月5日現在)について、赴任した地域、学校、校長のバックボーンなどに関する情報を収集した。これらの基本データと2019年度に実施した校長公募制を採用した学校の現地調査の結果を踏まえ、人口減少地域の学校や地域づくりにおいて、同制度がいかに機能しているのかを考察を進めた。 現況については、導入率は小学校で2割、中学校で1割であり、内部型になるとさらに割合は低い。忠清南道の内部型校長事例においては以下の知見を得た。①内部型校長が任用されているのは6校(全小中学校数563校)で、いずれも革新学校である。②人口減少、高齢化、多文化、教育福祉への対応が求められる地域で内部型校長が採用されている。③内部型校長のバックボーンについては、6人すべてが全教組の役員を経験し、4人が革新学校関連の推進にも関わっていた。 以上から、校長公募制が、政策的配慮を要する地域の学校において、学校と地域づくりを主体的に担い、リーダーシップを発揮する意志を持った校長を誕生させる機能があることを確認することができた
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、主体的に人口減少地域の学校と地域づくりに参与する教員を後押しする諸条件を明らかにすることをねらいとしている。 2018年度は、人口減少地域の小規模校を活かす教育、地域づくりに取組む小さな学校連帯、連帯のバックボーンのひとつである全国教職員労働組合への聞き取りを行い、マウル教師の実践を支えるネットワーク組織・運動に関する考察を進めた。 2019年度は、制度的背景として校長公募制に着目し、必要な文献、データを入手し、また現地調査を実施して、具体的な運用実態を考察した。そこで、教育部の『校長公募制推進計画』等から、島嶼・僻地・農漁村などにある学校を優先的に指定する方針を打ち出していること、一般教員が校長に任用される内部型の運用実態としては、全教組出身者が約7割(2012~2017)を占めることを明らかにした。 2020年度は、校長公募制が人口減少地域における学校や地域づくりに果たす機能についてさらに分析を進めるため、海外研究協力者の協力の下、忠清南道教育庁に校長公募制の現況に関する基本的データ、内部型校長(2021年3月5日現在)が赴任した地域、学校、校長のバックボーンなどに関する情報を入手して頂き、オンライン研究会で情報共有し、分析を進めた。 以上から、新型コロナウィルス蔓延により、2020年度は訪問調査ができず、研究計画に変更が生じたため、進捗状況において「やや遅れている」との達成度評価をしたが、これまでのところ、学校改革に邁進し、農村地域と共に行う教育実践を追求してきた一般教員のネットワーク、運動があり、また、リーダーシップを発揮する方途として校長公募制が機能していることを明らかにすることができている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究によって、校長公募制は、学校構成員のニーズに基づき、学校と地域双方の課題解決に向けた教育ビジョンの策定を促し、ビジョンを共有し、その実現を図る働きがあることを明らかにしてきた。 2021年度は、忠清南道の現内部型公募校長に対して、オンラインによるインタビューを実施し、以下について明らかにする計画である。①公募校長に志願した動機、背景、教育理念、②学校と地域双方の課題解決に向けた具体的取組み。 インタビュー結果を踏まえ、主体的に学校と地域づくりに踏み出す教員のバックボーン、校長公募制の人口減少地域の学校に果たす機能についてさらに分析を深め、人口減少地域の学校と地域づくりを担う教職員像を追求していく予定である。 研究遂行上の課題としては、新型コロナウィルスの蔓延があり、韓国への渡航調査が叶わないという状況がある。その代替措置として、オンラインを活用し、国内外の共同研究者と研究会を開催し研究を推めていく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該助成金が生じたのは、新型コロナウィルス蔓延により、予定していた国内外の出張がすべてキャンセルとなり、旅費支出がなかったためである。 今年度の助成金の使用計画として、専門的知識提供、翻訳など人件費・謝金に50万円、成果報告書印刷費に10万円、残額をその他にあてる。
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