研究課題/領域番号 |
18K02395
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
増田 広美 (植村広美) 県立広島大学, 人間文化学部, 准教授 (10614000)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 東アジア / 中国 / 職業教育 / 国家資格枠組み |
研究実績の概要 |
EUでは2008年以降、国家資格枠組み(NQF)という各国における既存の職業資格制度を再編し、EU共通の欧州資格枠組み(EQF)の体系へ作りかえる作業が進められており、近年、EU域外でも各国のNQFをEQFに参照可能な形へ再編する作業が進行している。わが国においても2020年にEQFとの連動性を意識したNQFを策定予定であるが、このEQFの特徴は学歴・学位と関連をもつ点にあるため、今後、大学が職業専門化していくことが予測される。また、これまで東アジアでは学歴という学術資格に比べて職業資格の威信や通用性が低かったものの、今後、学術資格と連動することで高まっていく可能性もある。そこで、本研究では近年の東アジア諸国で進む高等教育におけるNQFの導入に着目し、学歴・学位と職業資格がどう接続され、実践的な職業資格の導入によって大学を根幹とする高等教育制度にどのような変容がもたらされるかを検討していきたい。 初年度では東アジア諸国の高等職業教育制度の概要、特徴、改革動向を整理するとともに、中等職業教育制度との共通点や相違点を探っていった。その結果、中国では市場経済への移行に伴い2000年に「国家職業資格制度」というNQFが本格的に始動され、現在では高等教育における職業教育の浸透が急速に進み、2020年迄に高等教育の半分以上を占める規模へ発展させるという目標が掲げられていることが分かった。また、韓国においても2002年には「国家職務能力標準」というNQFが開発され、それと同時に職業学校を大学へ転換する等、高等教育の制度的一元化が進んでいることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は東アジア諸国の職業教育制度の概要や改革動向を整理するのみに留まっており、各国における国家資格枠組み(NQF)に関する具体的な状況を把握するには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、引き続き近年の東アジア諸国で進む職業教育の高等教育への浸透に着目し、従来では収入やキャリアの向上との結びつきが弱く、かつ社会的威信の低かった職業資格が学術資格と連動することによって、今後、どれだけ通用性が高まっていくのかを考察していきたい。また、国家資格枠組み(NQF)という実践的な職業能力評価の導入によって、今後、高等教育制度にどのような変容がもたらされるのかについても考察していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度では現地調査を実施しなかったため、次年度繰越金が発生した。2年目では東アジア諸国における国家資格枠組み(NQF)の状況を把握するための現地調査を計画している。
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