研究課題/領域番号 |
18K02403
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
竹内 洋 関西大学, 東西学術研究所, 客員研究員 (70067677)
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研究分担者 |
井上 義和 帝京大学, 学修・研究支援センター, 准教授 (10324592)
長崎 励朗 桃山学院大学, 社会学部, 准教授 (30632773)
佐々木 基裕 名古屋女子大学, 文学部, 講師 (90780560)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 教養 / 人格主義 / 自己啓発 |
研究実績の概要 |
2018年度の主な成果は、竹内洋『教養派知識人の運命―阿部次郎とその時代』(筑摩書房、2018年)と井上義和『未来の戦死に向き合うためのノート』(創元社、2019年)という2冊の研究書として刊行された。本研究のテーマ「知の変容とアカデミズム―講座制・教養部・ネットワーク」は、1970~80年代の日本の知的世界における「ニュー・アカデミズム」運動を規定した構造的な要因を実証的に分析することを第一の目的としているが、今年度は当該時期を直接の対象とする研究ではなく、「それ以前」と「それ以後」について実証的な研究をおこなった。既成のアカデミズムに対抗する/から逸脱する「知」の語りが成立する条件、という観点からより原理的に考察できるようにするためである。 竹内は、阿部次郎(1883-1959)というひとりの学者の人生を通して、知識人界と高等教育制度との関連のもとで変容する教養を描き出す。『三太郎の日記』(1914)を広範な読者層に流通させた出版文化、1920年代の高等教育機関の増設による旧制高校や大学予科の人文社会系教員市場の拡大などに支えられた教養主義は、まさにニュー・アカデミズムの原型として捉えることができる。井上は、「過去と未来の戦死に向き合うこと」をテーマに、映画《ゴジラ》のさまよえる英霊論や、知覧特攻平和記念会館のフィールドワークを踏まえた特攻死の自己啓発受容の分析、現代学生との対話などから、制度化された知(アカデミズム/ジャーナリズム)の外側で展開する、制度化されざる知の変容を分析する。阿部次郎が探究した「身を修める」人格=教養主義(竹内)と、命のタスキリレーの中継ぎとして「感謝・利他・継承」に目覚める特攻の自己啓発的受容(井上)とが、どのように関係するのか(しないのか)は次年度以降に検討される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「ニュー・アカデミズム」は1970年代から80年代の日本の知的世界で起こった運動であるが、そのものの現象を直接観察するのではなく、制度化された知への対抗や、制度化された知が捉えそこなった知的変容という観点から、人格主義的な教養探究者・阿部次郎の評伝的アプローチを採り、あるいは特攻の自己啓発的な受容の最前線をフィールドとして調査をおこなった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に、制度化された知への対抗や、制度化された知が捉えそこなった知的変容という観点も加える。1年目の成果をふまえて、阿部次郎が探究した「身を修める」人格=教養主義(竹内)と、命のタスキリレーの中継ぎとして「感謝・利他・継承」に目覚める特攻の自己啓発的受容(井上)とが、どのように関係するのか(しないのか)について討議をおこないながら、ニュー・アカデミズム運動の分析枠組みを構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたインタビュー調査が関係者の都合が合わず実施できなかったため、残額と次年度の配分額をあわせ、インタビュー調査や関連の図書購入等に使用する予定である。
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