研究課題/領域番号 |
18K02405
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
塙 武郎 専修大学, 経済学部, 教授 (90434422)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アメリカの初等中等教育(義務教育等) / 州資本補助金 / 財政力(地方財産税) / 学校資本改善計画 / 無限責任一般財源保証債 / 州債務補助金 / 教育サービス需要 / 財政調整機能 |
研究実績の概要 |
令和元年度の研究成果は、主に次の2点である。 第1に、コロンビア大学、コロラド大学デンバー校の初等中等教育政策を専門とする研究者との報告会および実務者との意見交換により、州および学校区レベルの予算編成や政策立案過程における現実的な課題を整理できた点にある。具体的には州資本補助金の配分のあり方は、州の財政事情(特に年金を中心とする社会保障関係費)および教育政策にかかる政治動向に大きく左右されており、財政調整機能を有する州教育金交付金とは大きく性格が異なっている。これは初等中等もそうであるが、高等教育にも及んでいる現実を把握した。 第2に、州資本補助金のあり方は、本来であれば教育サービス需要が大規模かつ多様である「大都市学校区」に優先配分される必要性があるにも関わらず、実際は州議会(州資本委員会等)の判断は必ずしも整合的でないことを議会資料データやヒアリング等で確認した。イリノイ州はその典型例であるほか、ウィスコンシン州、オハイオ州にも散見される。イリノイ州の事例に関しては、州資本補助金の制度設計は、他州に比べて生徒数規模(教育サービス需要)に応じて配分される内容も含まれており、加えて学校区の債務支払の肩代わりとなる州補助金もみられる。この事例は特異なものと解すべきであり、基本的に州は学校区の資本補助に対して消極的な態度をとっているものと解すべきである。 一方、連邦政府はこうした州レベルの資本補助には、教育に関しては一切関与しない。結果として、州と学校区の2者がアメリカの学校関連の資本投資のあり方を規定する大きな要素になっており、とりわけ財政力の弱い大都市学校区の教育サービス需要を満足する再分配システムは脆弱になり続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アメリカ、オーストラリア、シンガポール、日本の研究者・実務者との意見交換や報告会を通じて実証的な研究データの共有や方向性の調整を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、本課題の最終年度となる。これを推進するには引き続きアメリカでの事例分析を深め、実務担当者から学校資本投資に関するリアルデータを収集すること、また可能であれば、州議会(州資本委員会等)での資本補助金をめぐる政治動向を分析することが必要である。
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