研究課題/領域番号 |
18K02405
|
研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
塙 武郎 専修大学, 経済学部, 教授 (90434422)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | イリノイ州知事 / 州予算の不成立 / 学校区の一般財源保証債 / 学校区の債務管理基金 / 学校区の資本基金 / 学校区の自主財源(地方財産税) / 政府間財政関係 |
研究実績の概要 |
2022年度は研究期間の再延長によりアメリカ現地調査と資料整理が実現した。以下の2点について明らかにした。 第1に、イリノイ州議会における2016年から2017年の2年間、州議会での党派対立や予算不成立が初等中等教育(学校区)への資本補助金と利払いが一部凍結され、財政力の弱い学校区は短期証券債(TAN)を発行して教員給与等を賄うという財政運営を余儀なくされた。 第2に、またそうした学校区は地方財産税(自主財源)を債務管理基金に優先的に配分して債券の信用力を維持する行動を最優先すると同時に、資本基金への配分を削減することで均衡予算を維持した。州と学校区の政府間財政関係は対立的になっている事例が少なくないが、イリノイ州では州議会レベルでの政治対立が激しく、むしろ学校区への財政補助は裁判所が介する形で学校区への財政補助が講じられた。政治的対立で予算不成立が2年にわたって生じたが、義務的経費としての性質を有する初等中等教育への財政補助が司法によって保障された点は、アメリカ州・地方財政の研究において注目すべき点である。 イリノイ州議会は歴史的に民主党優勢であるが、2016年に共和党ラウナー州知事の登場で議会民主党との対立が激化する中で地方財産税が政治対立の主要な焦点の一つになっていたことが、アメリカ初等中等教育財政の研究に大きな示唆を与える。地方財産税は州でなく地方自治体(学校区)の自主財源であるが、州レベルでの政治論争の材料とされるのが現実である。1970年代カリフォルニア州の「プロポジッション13号」と同様、結果として初等中等教育の財源のあり方は「小さな政府」を主張する保守派や納税者によって批判される社会地盤がアメリカに存在することを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ収束により、それまで予定していた2016年イリノイ州議会の政治対立や予算不成立に関する資料整理とそれを裏付けるヒアリングが進んだ。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度は残額を利用して、最終の現地調査を実施し、州資本委員会等の議会資料を中心に資料整理を行う。また成果を取りまとめ、学会での報告の準備を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で外国出張が可能になったのが当該年度の後半からであり、当初の渡航計画が変更されたため、次年度では残額を外国出張にあてる。
|