研究課題/領域番号 |
18K02408
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
菊地 かおり 筑波大学, 人間系, 助教 (40616843)
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研究分担者 |
鎌田 公寿 常葉大学, 教育学部, 准教授 (80708066)
藤井 大亮 東海大学, 課程資格教育センター, 准教授 (60638807)
羽田野 真帆 常葉大学, 健康プロデュース学部, 講師 (90635038)
坂口 真康 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 講師 (00819427)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 国際化 / グローバル化 / 後期中等教育 / 国際学校 / 臨時教育審議会 / 教育政策 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本における国際化・グローバル化に対応した後期中等教育政策の論理と展開を明らかにすることである。研究課題は、1.臨教審答申以降の後期中等教育政策の通時的な検証、及び、2.カリキュラムや授業実践を通じた政策理念の具体化の検討の2点である。2020年度は、2に対応する作業課題である「国際学校における資料収集とインタビュー調査の実施と結果の分析」に着手し、東京都立国際高等学校(以下、都立国際高校)の開校に関わる資料を用いて、学校教育目標の策定プロセスを明らかにした。4年目となる2021年度は、引き続き、上記の作業課題に取り組んだ。その成果を以下に述べる。 2021年度は、都立国際高校の教育課程編成や各科目の授業計画について検討を進めた。具体的には、国際化対応を目的とした高校における教育課程の特質と課題を明らかにすることを目指し、都立国際高校の国際理解科目の位置づけと開発過程を分析した。その結果、次のことが明らかとなった。まず、「豊かな国際感覚の基礎」を身につける「日本文化」や「比較文化」といった科目においては、日本文化を基盤としながらも、それを相対化するために、文化間比較という方法を採用していることである。次に、科目の開発過程において、外国人生徒や海外帰国生徒の経験を重視することで、多様な生徒のアイデンティティ形成に配慮していることである。こうした都立国際高校の取り組みは、グローバル時代を迎えて久しい現代社会において、単一の「日本人」を前提とする自国中心主義への傾斜を克服する教育課程のあり方を考える上で示唆に富むものであるといえる。以上の内容について、日本高校教育学会第28回大会(2021年7月17日)にて発表した。その後、そこでの意見交換を踏まえて再度検討を行い、日本高校教育学会の機関誌『日本高校教育学会年報』に論文を投稿し、掲載が決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の研究課題は、1.臨教審答申以降の後期中等教育政策の通時的な検証と、2.カリキュラムや授業実践を通じた政策理念の具体化の検討の2点である。2021年度は研究課題2に焦点化して取り組んだが、資料の分析と考察に時間を要したこと、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたことに加え、研究代表者の休業により、研究課題の遂行にやや遅れが生じた。 研究課題2については、都立国際高校において収集した資料をもとに、教育課程編成や各科目の授業計画について検討を進めた。具体的には、国際理解科目の位置づけと開発過程を分析し、日本高校教育学会において学会発表を行い、機関誌『日本高校教育学会年報』に論文を投稿した。査読の結果、掲載が決定している。一方で、都立国際高校関係者へのインタビュー調査については、上述の理由により、調査を実行に移すことができなかった。2022年度の課題として、インタビュー調査の実施可能性について検討しつつ、研究の総括を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
5年目となる2022年度は、研究課題2に対応する作業課題である「国際学校における資料収集とインタビュー調査の実施と結果の分析」に取り組むために、都立国際高校におけるインタビュー調査の準備と実査に取り組む予定である。インタビュー調査を通じて、開校以来、国や東京都による教育政策のもとに、都立国際高校ではどのような対応がなされてきたのかについて、特に、同校の教育課程の改革や教育実践に携わった教員の認識に焦点を当てた探索を行う。ただし、インタビュー調査については、前年度に続き、新型コロナウイルス感染拡大の状況を見極めつつ、準備と実査を進めることとなる。感染状況により都立国際高校における実査が困難な場合は、現在までに収集した同校の資料の分析・考察(研究課題2)、及び、後期中等教育の国際化に関わる国や東京都の政策文書の分析・考察(研究課題1)をさらに深めることも視野に入れている。以上に加えて、2022年度は、これまでの研究の総括として、研究課題に対する研究成果の総合的考察に取り組むことを予定している。 なお、研究の推進に際しては、前年度と同様に基本的にはオンラインでの会議を通じた打ち合わせを行うが、新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いている場合は、必要に応じて対面による打ち合わせも行う。また、2022年度の研究成果については、これまでと同様に学術論文としてまとめ、学会誌等に投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウイルス感染拡大により、対面での打ち合わせや研究合宿、現地での調査実施が困難となったことが挙げられる。そのため、基本的にはオンラインでの打ち合わせに切り替え、収集済みの資料の分析に研究の焦点を移すことになり、旅費等にかかる経費を繰り越すこととなった。加えて、研究課題に関する情報収集のための学会参加もオンラインでの開催であったことも、次年度使用額が生じた理由である。また、研究チーム全体で資料分析に取り組んだこともあり、インタビュー調査にかかる旅費や文字起こしの外部委託料も次年度に繰り越すこととなった。これらの未使用額については、今後の新型コロナウイルス感染拡大の状況を踏まえつつ、インタビュー調査の実施可能性を模索するとともに、感染収束が見込まれる場合、打ち合わせや研究合宿等に必要な経費として使用する予定である。
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