本研究は、現代日本社会における教育費負担の在り方を検討するために、教育費の私的負担を軽減する関連諸制度について包括的に分析し、その制度配置の構造的課題と制度接合の可能性を探究し、教育費の私的負担を軽減する関連諸制度の現状や将来的構想が社会的支持を得られるかどうかを実証的に検証することを通じて、教育費負担及びその軽減制度の今後の在り方を示すこと目的としている。具体的な研究課題として「①個々の制度の再検証」「②制度配置の全体構造の把握」「③利用実態の全体的把握」「④制度接合・改革構想の考案」として既存の関連制度の全体構造と再編可能性を検討した上で、「⑤社会的支持の検証」として、関係する制度配置の現状と改革構想について一般市民に尋ねる調査票調査を行うことを計画していた。しかし、2020年度に生じた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を背景に様々な公的支援が検討され、実施されたことから、社会状況に対応した調査ができるように当初計画から研究期間を延長し、再調整を進めていた。 2023年度において、「⑤社会的支持の検証」として、教育・福祉に関する経費負担を公的負担として考えていくのかを明らかにするために2つの調査票調査を実施した。一つは、千葉県在住者を対象に3000名を選挙人名簿から無作為抽出した郵送による調査票調査(回答数631件)、もう一つは調査会社の登録モニターを対象とした4500名を対象とするウェブオンライン調査(回答数4532件)である。2つの調査では、同一の質問項目を設定し、比較できるように設計した。これらの調査では、今後の日本社会のあり方や教育や福祉の費用負担の在り方、どのような理由であれば税負担(増税)を許容するかなどを尋ねることで、教育・福祉に関する経費負担を私費負担と公的負担の在り方について社会意識の現状を検証できるものとして実施した。
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