留学生に対する、広義の学生支援の提供枠組みについて、引き続き情報収集を行った。さらに、留学生に対して提供すべきサービス・支援内容を定めた制度を有するニュージーランドとオーストラリアを事例として取り上げ、制度が整備されてきた背景を明らかにした。また、留学生支援が、高等教育における制度全体にいかに位置づけられているのかを整理し、二か国ともに学術的サービスと、非学術的サービスが制度上区分されていること、後者に関して、大学が提供すべきサービスの基準を定める国レベルの枠組みを有していること、留学生に対するサービス提供に関して特に留意事項が示されていることを指摘した。さらに、サービスの質を保証するために、学生の声を反映する仕組みが整備されており、そのプロセスにおいて学生自治会の担う役割が大きいことなども明らかにした。対して、日本の大学の特徴としては、留学生支援の具体が規定されていないこと、大学における非学術的サービスの制度上の位置付けが明確ではないこと、学生が参画する仕組みが整っていないことなどを指摘した。加えて支援の内容面の比較を通じて、日本の大学には、学生から大学に対する、不満や不服を受付け対応する枠組みが不在であることを指摘し、相違が生じる背景について分析を加えた。 本年度は、これらに加えて、国内大学の学生相談機関を対象とした、留学生対応体制に関する調査を実施しした。当該調査は、当初2019年度の実施を企画していたものであったが、実施直前に新型コロナウイルス感染症が拡大し、延期していたものである。調査結果を、前回2011年に実施した同様調査の結果と比較し、国内大学における多言語対応状況や、留学生対応体制の変化について明らかにした。
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