研究課題/領域番号 |
18K02411
|
研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
金子 真理子 東京学芸大学, 教員養成カリキュラム開発研究センター, 教授 (70334464)
|
研究分担者 |
三石 初雄 帝京大学, 付置研究所, 教授 (10157547)
坂井 俊樹 開智国際大学, 教育学部, 教授 (10186992)
原子 栄一郎 東京学芸大学, 環境教育研究センター, 教授 (70272630)
小林 晋平 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (70513901)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 教育目的 / カリキュラム / 教科内容 / 社会科 / 理科 / 教員養成 / 未来のカリキュラム |
研究実績の概要 |
本年度は、第一に、戦後日本の教育の目的がどのように論じられてきたかを、教育基本法や先行研究をもとに整理した。教育基本法(平成18年法律第120号)が掲げる教育の目的を見ると、「第一条 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」と示されている。日本の教育は「人格の完成」を目指して行われていることをおさえた上で、国民として求められている「平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質」とはいったい何だろうか。改正前の教育基本法(昭和22年法律第25号)を参照すると、その中身はもう少し具体的に示され、少なくとも教育基本法が改正された2006(平成18)年までは、「真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた」と表現されるような資質の育成が、教育の目的すなわち「人格の完成」の要素の一つとして明示されていたことになる。ここには、民主主義社会の形成という未来の社会像が反映されている。 第二に、東京学芸大学で、教師教育を担う大学教員・附属学校教員が各教科の目的や意味をどのように捉え、学生に伝えているか、さらには、学生がそれをどのように受けとめているかを調査した。教育という課題を共有している大学教員が専門分野を超えて学びの目的を語りあうとき、共通していたのは、人間、自己、自由といったことと学ぶことの関係の自覚である。とりわけ社会科と理科は、異なる学問体系を背景とし相補的なものとして位置づけられることが多いが、私たちが生きているこの世界のありようを発見し、理解し、それに主体的にかかわっていこうとする資質を育てるという目的を共有している。また、初等教員養成課程の学生のほうが中等教員養成課程の学生に比べて、社会科と理科の相互関連性に自覚的な傾向がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、第一に、戦後日本の教育の目的がどのように論じられてきたかを、教育基本法や先行研究をもとに整理した。第二に、大学教員や附属学校教員の視点から、教科内容学習の教員養成における意味を明るみに出し、議論を促進することができた。第三に、各教科内容をあわせて学ぶことになる学生の視点から見ると、これらは学生の学習の中でどのように相互に関連し、教えることに生かされていくのかを検討するため、学生に対する質問紙調査とインタビュー調査を実施した。インタビュー調査については、1名の学生にしか行っておらず、次年度に引き継がれる課題である。質問紙調査は、2018年10~11月に、東京学芸大学の社会科専攻と理科専攻の大学4年生231名を対象に実施した。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、主に以下の二点に力点をおいて研究を推進したい。第一に、今年度形成した研究ネットワークを基盤として、教員養成大学の教員と学生に対する調査を拡大し、分析を進める。第二に、初等・中等教育で教えられている社会科と理科の学習指導要領や教科書に注目して、諸外国と比較しながら、各教科の目的と内容編成の特徴を明らかにする。研究代表者は、イギリスの前期中等教育段階の理科の学習指導要領や教科書を分析しており、これとの比較を行う。 以上のデータを、教育社会学、物理学および理科教育、歴史学および社会科教育、教育学および環境教育、教育方法学および教師教育をそれぞれ専門とする研究メンバーで検討する作業を通して、教科学習の目的と教科間の関連性について新たな可能性を追究し、学校教育および教員養成の「未来のカリキュラム」を構想する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
学内の教員の協力を幅広く得ることができたため、調査費用がかからなかった。翌年度への繰り越し分は、学生へのインタビュー調査費用、書籍やパソコン等の物品購入、調査旅費、アルバイト謝金等に使用する。
|