研究課題/領域番号 |
18K02411
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
金子 真理子 東京学芸大学, 次世代教育研究センター, 教授 (70334464)
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研究分担者 |
三石 初雄 東京学芸大学, 次世代教育研究センター, 名誉教授 (10157547)
坂井 俊樹 開智国際大学, 教育学部, 教授 (10186992)
原子 栄一郎 東京学芸大学, 環境教育研究センター, 教授 (70272630)
小林 晋平 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (70513901)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カリキュラム / 教科学習 / 教育の目的 / コロナ禍 |
研究実績の概要 |
東日本大震災と原発事故は私たちがリスク社会の中に生きていることを気づかせた。2020年は新型コロナウイルス感染症が拡大した。私たちは、何のために、いかなる知識を生産し、伝え、教えるべきなのだろうか。本研究の問いは、コロナ禍にあってより切実なものとなり、今年度はコロナ禍に向き合う教育実践に照準をあて、研究を進めた。 2020年3月2日以降、全国の学校が一斉休校に入り、都市部などでは同年5月末まで3ヶ月間にわたって休校した学校もあった。突然訪れた長い休校に際し、周囲の大人からの十分な説明やガイドが欠けていたことにより、状況を意味づけ、納得して過ごせた子どもは限られていた。にもかかわらず、この問題は休校明けの「学習の遅れを取り戻す」教育施策からも取りこぼされ、なおざりにされてきたのである。休校明けに必要だったのは、長い休校期間中に芽生えたであろう子どもの疑問や思いをすくいとってこれに応え、新型コロナウイルス感染症と一斉休校がもたらした子どもの経験の「空白」や「差」を埋めるような実践の構築だった。研究代表者と分担者は、そのような実践事例を見つけることや、自らが実践を構想することに注力した。 定期的な研究会では、大学における自らの授業についても検討課題に挙がった。コロナ禍における対面授業、オンデマンド授業、オンライン授業等の実践例を持ち寄り、目的、課題、学生の反応等について検討を重ねた。 2021年3月2日には、研究分担者の小林(宇宙物理学)が話題提供者となって、公開セミナー「面白がる力を育てるために~「学ぶ星」構想~」をオンラインで開催し、学生、教師、研究者をはじめとする40名程の参加者とともに議論を深めた。そこでは、日常に学問が当たり前に存在し、不安定な状態や予測不可能性を楽しめる力を育む教育の構想が語られ、そのための方法へと議論が発展した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、コロナ禍における教育実践の検討へと焦点を移し、研究計画を一部変更して実施した。研究の進捗はやや遅れたが、学びの目的を検討するにあたり、コロナ禍や休校にかかわる問題は避けて通れなかった。実際、これらの検討を通して、本研究課題を深めることができたと考えている。 コロナ禍における教育に関しては、文献調査や複数の教師や保護者らへのインタビュー調査を実施することにより、データを収集した。また、定期的な研究会に加えて、一般に公開してセミナーを開催し、議論を深めることができた。また、学びの目的については、小学校・中学校・高校段階のみならず、大学教育も射程に入れて議論することにより、学問と教育の関係性について検討を深めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後もコロナ禍に向き合う教育実践に焦点を当てて研究をすすめる予定だが、現代社会には感染症リスクの他にもさまざまなリスクがある。このような社会の現状を踏まえた上で、事例をもとに学びの目的を検討していくとともに、理論化の可能性についても探りたい。 日常に学問が当たり前に存在し、不安定な状態や予測不可能性を楽しめる力を育む教育の構想等が論点として挙がっている。そのほかにもどんな方向性があるかを、国内外の現場の教師の声や実践事例をもとにして、多角的に探っていきたい。さらに、学びの目的とともに方法を検討し、コロナ禍に向き合う教育実践の試行と検証ができればよいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、研究会や公開セミナーをオンラインで行ったことや、調査に出向くことが難しかったことなどから、費用が縮減された。翌年度への繰り越し分は、インタビューデータの反訳、書籍やPC関連機器等の購入などに使用する。
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