本研究の目的は、児童養護施設退所者の人的ネットワークの実態、及び「退所児童等アフターケア事業」の実施状況について明らかにし、その結果を用いて退所者のつながり支援の在り方について考察することにある。本研究は、1)児童養護施設退所者の人的ネットワークの実態について明らかにする(退所者調査)。2)「退所児童等アフターケア事業」の実施状況について明らかにする(事業所調査)。3)児童養護施設退所者のつながり支援の在り方を考察する(支援の在り方を考察)。という三つの柱から構成されている。一年目(2018年度)に、先行研究の検討・調査項目の作成を行い、二年目(2019年度)に、退所者調査・事業所調査の実施、三年目(2020年度)に、分析・成果発表をする予定だった。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の流行によって、事業所調査及び成果発表の十分な機会を得ることができなかった。そのため、当初の計画を二年延長し、2022年度についても調査と成果発表を行った。 2022年度は、児童養護施設退所者を対象としたウェブアンケート調査を実施した。これは、新型コロナウイルス感染症の流行によって十分な機会を得ることができなかった、事業所調査に代わる調査である。400名の児童養護施設退所者を対象に実施し、施設退所後の人的ネットワークの現状について量的に明らかにした。加えて、日本高等教育学会第25回大会課題研究II「高等教育における多様性と包摂」(2022年5月28日)において「子どもの貧困対策と高等教育―児童養護施設入所経験者の大学等進学を事例として―」と題して報告を行った。さらに、これまでの研究成果を博士学位請求論文『児童養護施設入所経験者の「大学進学」に関する教育社会学的研究』としてまとめることができた。
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