本研究は、グローバル化、市場経済化などの急激な社会変動を背景に展開されるマイノリティの文化伝承の実態を明らかにすると同時に、それらの実践が現行の教育システムに如何なる変容をもたらしているかを、中国西南地域の少数民族の実践を事例に明らかにしようとするものである。 本研究が対象としているのは、①モソ人の母系社会における若者の意識の変化、ダバ教(土着信仰)の宗教的職能者の後継者問題、②雲南省プミ族が取り組んでいる民族言語(プミ語)の学校におけるカリキュラム化の実践とその課題、プミ族の信仰体系を支えるハングイ(宗教的職能者)の育成を目指したハングイ文化 学校とそれに続くハングイ文化コースの現状、③貴州省のトン族の学校で試みられている伝統芸能-「トン族大歌」の教育課程化の実践、④雲南省麗江における ナシ族の学校で東巴文字の伝承をめぐって展開される民族文化教育の実践、⑤貴州省威寧県のイ族が取り組んでいる宗教的職能者(ピモ)育成学校(畢節イ族双 誤職業学校)の設置及び運営、卒業生の現状等を中心とする事例である。前年度に引き続き、コロナ感染 の拡大を受けて現地調査を行うことができず、主として「中国知網」等を活用した関連資料の収集とリモートワークによるインタビュー等を実施し、それに基づ いて研究を進めてきた。文献調査で得られたデータや情報については、リモート形式のインタビュー等を通して確認作業を行い、本課題の最終報告書の作成を進めてきた。 また、モソ人の母系社会における伝統文化に関する調査は、リモートを通して現地調整役と調整を行いながら、映像処理(現地語の翻 訳)を行い、翻訳作業はほぼ完成している。 研究成果については、所属学会で口頭による論文発表を行った。
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