本研究の目的は①近代日本の少年/少女雑誌の投稿文化を比較し、②近代日本の中学校/高等女学校の作文教育の実践を比較することである。2022年度は少女雑誌『少女の友』を分析し、少女向け冒険小説において少女は①1908~1911年は大人に助けられる存在、②1912~1918年は少年に助けられる存在、③1918~1928年は少年と助け合う存在、④1929~1945年は少女同士で助け合う存在とされていたことを明らかにした。これは共著『歴史の蹊、史料の杜 史資料体験が開く日本史・世界史の扉』にて公表した。また東京都立日比谷高校の『日比谷高新聞』『星陵』を分析し、男女共学制導入の受容過程を明らかにした。1950年度、旧制・新制の差によって男女差が不可視化されていたが、1951年度、新制が多数派になることで①学力、②教室内の対人関係能力、③家事能力、④言葉遣い・心遣いに男女差が見出され、女子は①の差によって足手まといとされ、②の差によって家事労働を押しつけられ、蔑視されていた。男子は女子の不満に対処するため、女子に①「男子校」の枠組みの枠外で男子と異なる教育を施す、②枠内で男子と同一の教育を施すこととしていた。これは『成蹊大学文学部紀要』第58号にて公表した。2018~2022年度は、戦前戦後の少年少女雑誌『穎才新誌』『少年園』『少年世界』『少女世界』『日本少年』『少女の友』『少年倶楽部』『少女倶楽部』『ひまわり』『ジュニアそれいゆ』『女学生の友』『少年』の投稿文化を分析した。それとともに、戦前戦後の中等教育機関の作文教育の実践を分析した。これらによって少年少女雑誌の変遷、少年少女雑誌の投稿文化の変遷、それらに影響を及ぼした中等教育機関の作文教育における実践の変遷が明らかにした。これは単著『「少年」「少女」の誕生』にて公表した。
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