本研究は、インドネシアの高等教育機関における宗教施設の教育的役割を明かにするため、大学内のモスクにおいて提供される教授・学習活動と、教員による教育・研究・社会貢献との関わりを比較・考察し、インドネシアの高等教育機関におけるイスラームの実態の解明に努めることを目指してきた。 人口の約90%がイスラ―ム教徒であるインドネシアでは、イスラーム系の高等教育機関だけでなく、一般系の高等教育機関においても、イスラ―ム教徒の教職員および学生が大半を占めることが多く、一般系の国立の高等教育機関には、モスクが創設されている例は多い。 これまでの研究の過程で、イスラーム系の高等教育機関よりも、一般系の国立の高等教育機関のモスクでは、学生や地域社会の人々向けのイスラームの基礎的な学習が活発に展開されており、かつて小規模だった大学内のモスクは、近年では、施設・設備の充実が図られていることが明らかとなった。 一般系の大学のモスク組織同士のネットワークがあり、大学モスクでの活動の充実を図る試みがあることや、各大学のモスクは、大学教育として行われる宗教教育(必修科目)と関連する学習活動や学生たちの課外活動としてのイスラームの教えに親しむ機会にも活用されていることがわかった。またこうした大学内でのモスクの活動の充実の背景には、1980年代以降の社会全体のイスラーム化に伴い、人々のイスラーム学習への関心の高まりも大きく関係していることも本研究を通して明らかになった。 最終年度は、前年度同様に、新型コロナウィルスの影響により海外渡航はできなかった。しかし、国内において、補足の情報の収集を行うとともに、本研究の総括として、2021年6月の日本比較教育学会(オンライン開催)および9月のアジア比較教育学会(オンライン開催)などにおいて、研究成果の発表を行った。
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