本研究は進路多様校生徒のキャリア形成と産業構造や地理的制約などの地域特性がいかに関連しているのかを明らかにすることを目的に調査を行い検討してきた。その結果、①地域特性に対する認識は、工業科のような学科で学ぶ内容が比較的明確であると差異が生じ難い②地域間におけるキャリア形成の差異は、公立/私立といった設置者や学科の配置状況、地域の産業構造、地域産業に従事する労働者の教育歴の状況と関連しうる③大都市部の高校生では、消費文化への傾倒が地方都市の高校生より親和性が高くなっていた。また、地方の高校では、将来の進路に対する切迫感が強く、職業生活を安易に考えない傾向が見られた。この背景には、大都市地域と比較し、調査対象とした地方の地域では、特定の産業に従事する大人が多くキャリアの展望が可視化し易い。こうした生活環境の違いは、将来のキャリアに対する認識に影響を与えていると考えられる。④地方では若いうちに都会で生活し地方では学べないことを吸収することにより、自己のキャリア選択の可能性を広げるといった考え方が一定程度説得力を伴って流通している。⑤都市部の専門学校等進学希望者では、学習に対する有用感・積極性の弱さ、豊かな人間関係の弱さ、消費文化の親和性という特徴が見られた。 こうした成果の一部は、日本子ども社会学会第28回大会(2022年6月25日 宮城教育大学・オンライン)、日本教育社会学会第74回大会(2022年9月11日 日本女子大学・オンライン)で報告した。
|