研究課題/領域番号 |
18K02433
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
村山 拓 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (50609641)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ヘルス・リテラシー / 子ども / 障害 / 貧困 / 学校教育 |
研究実績の概要 |
本研究では、障害児や貧困・文化的不遇児等にソーシャルインクルージョンに向けたヘルス・リテラシーの獲得とその取り組み状況について、とりわけ米国の実践事例に注目した調査研究を進めている。米国の学校教育におけるヘルス・リテラシーの学習の内容と方法の特徴を検討する。健康教育を含む健康増進に関する領域で、ヘルス・プロモーションとヘルス・リテラシーの概念が活用されることが多いが、先行研究によれば、ヘルス・プロモーションが自身の健康維持に主眼を当てることが多いのに対して、ヘルス・リテラシーは、健康に関する情報や、健康維持、増進、回復等に関する環境に主体的に働きかけることに焦点が当てられているとされる(Nutbeam 2000)。 平成30年度の研究で具体的に注目したのは、イリノイ州の学校教育カリキュラムにおける、自身のヘルス・コントロールに関する学習課題の配列等である。同州では、学校教育で獲得が期待される健康促進に関する内容を整理した、「身体発達・健康スタンダード」が設定され、学校教育での実践が進められている。同州プロジェクトの特徴として、健康問題を個人内部に内包する課題のみとして捉えるのではなく、公共ルール(例えば交通規範)等との関係において健康問題を捉えている点、自身に健康問題や障害等の課題がない場合にも、身近な他者の健康状態や障害等への理解を促している点、学年、学齢に応じた到達基準を設定し、成果の測定を念頭においている点などがその特徴として挙げられる。 なお、上記成果の一部は、日本特別ニーズ教育学会第24回大会(2018年11月18日、大阪体育大学)にて自由研究発表「イリノイ州におけるヘルス・リテラシー教育のカリキュラム開発 ―「身体発達・健康スタンダード」に注目した検討―」として報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イリノイ州の事例の収集、分析を当初計画に沿って進めているが、現地調査が引き続き重要と考えられる点、研究成果を論文として公表するにいたっていないため「おおむね順調」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、現地での学校の実践レベルでの取り組み状況に関する事例収集と検討が必要であるとともに、メンタルヘルス・リテラシーに関する取り組み、特に思春期の課題についてはさらに検討を重ねる必要がある。また、ヘルス・リテラシーに関しては、学校教育の質の評価が困難であるとする指摘もなされている(Berkman, et al. 2014)。具体的なカリキュラム開発と評価との関連は引き続き検討する必要がある。 これらの課題に関しては、現在国際学会での研究発表を一件予定している(演題採択済み)。また、関連する課題について国際誌に論文を一件投稿している(審査中)。これらの課題を通して、研究の推進に努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外での学会発表を検討し、その日程等を勘案した結果、海外渡航を延期したため、未使用額が発生した。2019年5月の国際学会参加、発表で2019年度の助成金とあわせて使用する予定である。
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