(1)「科学の保育実践の本質的な要素」とは,① 身の回りのあらゆる事象に関する機構,因果関係,相関関係について思いを巡らせること,② 身の回りのあらゆる事象に関する機構,因果関係,相関関係を想定し,自分なりにまたは自分たちなりに関わり試すこと,③ 現時点において科学的に適正であると判断される解答に辿り着くことではなく,自らの解答に辿り着くまでの試行錯誤そのものに際限なく浸ることである。以上の3点を包括し,「探究」とすることも可能である。 (2)「科学の保育実践が持ち得る意義」は以下である。① 「探究」は,科学の保育実践の本質的な要素であるとともに,乳幼児の生の本質的な要素でもある。真に探究的な保育のなかで,乳幼児は真に生きる。② 「探究」を通じて自分の真実に辿り着くという経験が,少しずつその人をかたちづくり,支える。③ 「探究」を通じて自分であることを認められた子どもは,他者が他者であることを受容することができる。科学の保育実践は,科学的な思考の萌芽を促すこと以上に,子どもが一人の人(ヒト)として生きることを支える。 (3)「発達に基づく科学の保育実践の系統性」については,3歳未満児及び3歳以上児に共通する要素として,「1.あえてしない」「2.一緒にしてみる」「3.繰り返す」「4.五感を使う」「5.引きだす」「6.わざとまちがう」を抽出し,3歳以上児のみ「7.他の子どもにたずねる」を加えた。子どもの年齢が上がるに従い,保育者は,材料を多様にまた適度に提供する,条件を多様にまた適度に例示する,協同での探究を促すよう関わる機会が増える。年齢が上がっても,科学的に適正であると判断される解答を,「探究」に先んじて与えてはならない。 以上の研究成果の一部を,日本発達心理学会第34回大会(ラウンドテーブル)(2023年3月3日-5日,立命館大学大阪いばらきキャンパス)において発表した。
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