本研究課題の3年目にあたる2020年度は、前年度の全国の国公私立の4年制大学を対象に行った質問紙調査(653校を対象に調査票を郵送、回答を得られた131校について分析)の結果をさらに精査し、児童養護施設出身者への学生支援の内容と効果のあった取り組みを整理した。奨学金や授業料免除の充実が引き続き望まれること、最初の相談相手としてはクラス担任やゼミ等の教員が選ばれやすいということ、うまくいった取り組みとして児童養護施設職員と大学の教職員とが連携して支援を行った事例などが報告され、児童養護施設出身者を取り巻く大学内外の大人が共に学生の育ちを支えていくことの重要性が示唆れた。調査結果は、大阪教育大学紀要総合教育科学第69巻(査読あり)に投稿し、掲載された。また、児童養護施設出身者である大学生85名を対象に2019年度と同じ内容のニーズ調査を行い、新たに24名から回答を得ることができた。得られたデータを2019年度調査のデータ(111名を対象に調査実施、36名から回答)に加え、合計60名分の回答について、再度丁寧に分析を行った。36.7%の学生が現在の経済状況を「苦しい」または「とても苦しい」と回答したこと、経済面の心配とともに「将来の進路や生き方」「就職できるかどうか」「自分の体調や健康」「家族」など様々な悩みを抱えていること、悩みの相談相手として児童養護施設職員の割合が一番高いこと、一方で「誰にも相談しないで一人で解決する」と回答した学生が46.7%であること、が明らかになった。
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