研究課題/領域番号 |
18K02441
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
杉村 伸一郎 広島大学, 教育学研究科, 教授 (40235891)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 遊び / 怪我 / 養育態度 / 遊びに対する価値観 / 保育 / 幼児 / 発達 |
研究実績の概要 |
屋外で高い所に登ったり高い所から飛び降りたりといった、リスクを伴う遊びを行うことは、子どもの健康と発達を促進することが明らかになりつつある。しかし、子どもの安全を守り怪我を防止するという意識の高まりにより、リスクを伴う外遊びは減少している。そのため海外では近年、可能な限りの安全を目指すのではなく、必要に応じて安全を考慮し、リスクを伴う外遊びの機会を増やすことが提唱されている。日本の状況も同様であるが、保護者や保育者がリスクを伴う外遊びを受け入れるには、リスクを伴う外遊びにより、諸能力がどの程度発達するのか、怪我がどの程度発生するのか、といった基本的なエビデンスが不足している。そこで本研究では、リスクを伴う外遊びが幼児の発達に及ぼす影響を総合的に検討するとともに、リスクを伴う外遊びに関する保護者と保育者の意思決定過程を解明することを目的としている。 本年度は、Greve et al. (2014) を参考に、インターネット調査を実施し、子どもの頃の遊びの内容と現在の発達を尋ね、長期的な影響を検討する予定であった。しかし、学会のポスター発表やシンポジウムでの話題提供の質疑をとおして、「リスクを伴う遊び」の定義を再考する必要を感じたため、改めて定義を検討している。また、これまでは、リスクを伴う遊びを行うことにより、発達のどのような側面が育つのか、を可視化しようとしてきたが、子どもにはもともと探索欲求や挑戦心などがあり、リスクを伴う遊びの保障により挑戦心などを発揮し、それらがさらに発達する、というように捉え直しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要にも記載したように、本年度は、「リスクを伴う遊び」の定義を再考するとともに、遊びと発達との関係の捉え直しを行ったため、予定していたインターネット調査の実施まで進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
遊びの長期的な影響を検討するための調査は、Greve et al. (2014) を参考に、子どもの頃の遊びの内容と現在の発達を調べる項目を作成し、インターネット調査を20代1000名を対象に実施する。また、保育者を対象にした調査は、各園に個別に合計で200名程度に依頼する。調査内容は、以下のとおりである。価値観と態度の測定には、申請者のグループが開発した保育者用のリスクマネジメント評価尺度を用いる。価値を調べる項目は、「スリルのある遊びは、子どもの発達にとって価値がある」などの14項目から成る。子どもによるリスク管理は、「安全に遊べるかどうかは、子ども自身に判断させる」などの5項目、保育者によるリスク管理は、「怪我をする可能性のある遊びはさせない」など5項目から成る。また、子どもの成長・発達は、東アジアこども発達スケール(青柳他, 2013)で測定し、怪我や事故に関しては、申請者のグループが保育所のリスクマネジメント用に作成したカテゴリーを用いる。必要に応じて、インタビューや観察も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、「リスクを伴う遊び」の定義を再考するとともに、遊びと発達との関係の捉え直しを行ったため、予定していたインターネット調査の実施まで進めることができなかった。次年度は、定義を改めて質問紙を修正の上、本年度に予定していたインターネット調査を実施するとともに、当初から次年度に予定していた調査も実施する。
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