本年度は3つの研究を実施した。一つ目は,「危険」や「リスク」という概念の整理とベネフィット・リスクアセスメントの進め方の整理を,プレイグラウンド・セーフテイ・ネットワーク代表の大坪龍太氏とともに行った。前者に関しては,遊びにおける危険性のスペクトラムとベネフィット・リスクアセスメントの関係を図にまとめた。後者に関しては,2023年5月に刊行された,国際標準化機構のガイドラインISO4980を参考に,ベネフィット・リスクアセスメントの進め方フロー図を作成した。これらは,一般社団法人日本公園施設業協会が発行している「仲良く遊ぼう安全に」というパンフレットの一部に反映されている。 二つ目として,保育中のリスクを伴う遊びにおける対応の判断の実態を明らかにするために,保育所,幼稚園,認定こども園などに勤務している保育者500名を対象に,インターネット調査を実施した。具体的には,保育中の遊びにおいて,保育者が,遊びを許容するか,それとも,制止・禁止するかの判断に迷うのは,どのような場面なのか,なぜ迷い,迷った際にどのように対応しているのか等に関して,自由記述を中心に回答してもらった。現在データの分析中である。 三つ目として,リスクを伴う遊びにおける保護者の言動に関する調査を実施した。この調査では,保護者のリスクを伴う遊びに対する態度だけでなく,子どもが挑戦した後の言動が,子どもの発達と関連すると予想し,子どもがリスクを伴う遊びに挑戦し,失敗や成功した場合に,どのような言動をするかを,理由とともに尋ねた。対象は2歳から小学1年生の子どもをもつ保護者846名であり,現在データの分析中である。
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