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2018 年度 実施状況報告書

乳幼児期から学童期のふざけ・からかい行動の解釈を決定づける要因と発達的意義

研究課題

研究課題/領域番号 18K02443
研究機関愛媛大学

研究代表者

小野 啓子  愛媛大学, 教育学部, 特命准教授 (40804159)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード他者理解 / 自己意識 / ふざけ・からかい行動 / コミュニケーション行動 / 遊戯的サイン / 発達的意義
研究実績の概要

本研究の目的は,日常生活場面で観察されるふざけ・からかい行動の解釈を決定づける要因と,コミュニケーション行動としての発達的意義を検討することである。今年度は,特に以下の点について文献とデータの収集を進めた。
①乳幼児期を対象とした縦断的観察:平成30年9月より,0~3歳期の乳幼児2名を対象とし,乳幼児期のふざけ・からかい行動の受容と表出の過程について縦断的観察を行った。養育者との日常生活場面を毎月定期的にビデオに記録,1回の録画時間は30分~1時間程度,1ヶ月あたり2時間を目安とした。ふざけ・からかい行動については「親しい他者や親しくなりたい他者の感情の影響を与えようとする意図的な行為(Reddy,1991)」と定義し,定義にあてはまるエピソードを抽出し,遊戯的サインと受け手の側の反応についての分析を行った。1~2歳期では1歳代後半において,大人の遊戯的サインが上手く解釈できずに困惑している状態から,次第に遊戯的意図を読み取ってやり取りの楽しさを共有できる状態への変化が観察された。さらに,2歳前後には,対象児自らが主体的にふざけ・からかい行動を発信する様子が観察された。同時期には,母親の日常的な家事行為のふりを再現したり,他者に適用したりする様子が頻繁に観察されており,これらの行動の背景にある他者認識や表象能力の発達との関連性が示唆された(日本発達心理学会,2019)。
この結果を踏まえて,0~1歳期の縦断観察データは,他者認識や表象能力の現われの指標となるふりや見立ての行動の表出も含めて分析と検討を行う予定である。
②学童期から成人を対象としたアンケート調査:
予備調査として,紙芝居を用いたふざけ・からかい行動に関する意識調査を行った。その結果,紙面から得られる情報だけでは判断に迷うことや,世代による捉え方の違い,互いの関係性による捉え方の違いなどに言及する回答が得られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

今年度は初年度ということもあり,文献収集を行うとともに,本研究の目的である日常生活場面でのふざけ・からかい行動の解釈を決定づける要因と,コミュニケーション行動としての発達的意義を検討するために,縦断的観察をスタートさせ継続していくということを中心に取り組んだ。縦断観察による映像データは蓄積しているが,対象となるエピソードを詳細に書き起こし,分析・検討する作業に時間を要することから,本研究課題の進捗状況としてはやや遅れているといえる。
現段階までの分析で得られた結果は,2019年3月の学会発表(日本発達心理学会第30回大会)にて発信することができた。発表会場においては,エピソードの抽出と記述の方法について細かな提案をいただいた。エピソードの抽出に関しては,エピソードの終了のしかたについての記述に関してご指摘をいただき,今後のエピソードの書き起こしと分析の際の貴重な示唆を得た。また,遊戯的サインの細かな分類の方法についても,有益なご提案をいただいた。受け手の側の解釈や反応については,受け手の側の余裕という視点からの意見をいただき,同じ人物,同様のエピソードであっても,解釈が異なる可能性が示唆された。
また,同大会(日本発達心理学会第30回大会)のラウンドテーブル(伊藤理絵企画代表者,「笑う・笑わせる・笑われる」)においては,実験的に他者を笑わせるたという課題を実施した報告から,他者の心的状態を操作する力について,自分と他者の分離という視点からの知見を得た。さらにラウンドテーブル(福田きよみ・岩田恵子 企画代表者『遊び』を探求するー遊びの力に着目してー)においては,遊戯的サインを理解するために必要とされる,他者との同一化という視点についての新たな知見を得た。今後蓄積されている縦断観察のデータについても,新たな視点を加えて分析・検討を進め,研究報告を行っていく予定である。

今後の研究の推進方策

今後は,これまで定期的に行っているビデオ撮影による乳幼児の縦断的観察をさらに継続して行うとともに,学会での意見交換から得られた新たな知見を加えて,これまで蓄積しているデータにおけるエピソードの抽出と分析を行う。また,乳幼児の縦断的観察の手法として,ビデオを用いた記録については協力が得られにくいため,定期的な育児記録と養育者へのインタビューを組み合わせた手法を導入することを検討している。
学童期から成人へのアンケート調査については,予備調査の結果を基に,追加の質問項目などを設定することを検討している。
分析を終えたデータから,逐次,日本発達心理学会や日本心理臨床学会等や研究紀要などを通じて発表していく予定である。

次年度使用額が生じた理由

必要な機器を購入し縦断的観察による映像データの収集は進んでいる。しかし,映像データから本研究で定義する「ふざけ・からかい行動」にあてはまるエピソードを抽出すること,エピソードの詳細な書き起こしと,遊戯的サイン,受け手の側の反応,他者理解の指標(他者のふり,他者に向けたふり)との関連性についての分析と検討にはかなり時間を要している。そのため,2018年度は学会発表の機会が少なく,旅費などの使用が当初の予定より少なかったため,助成金の繰り越しが生じている。
2019年度は,縦断的観察に新たな対象児が加わる予定である。研究に協力してくれる対象児の保護者と,データの書きおこしなどを行う研究補助協力への謝金,および,学会発表の際の参加費が主な出費となる予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2019

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] ふざけ・からかい行動の発達的意義に関する研究(1)-1~2歳期のふざけ・からかい行動の受容と表出ー2019

    • 著者名/発表者名
      小野啓子
    • 学会等名
      日本発達心理学会

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公開日: 2019-12-27  

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