研究課題/領域番号 |
18K02457
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
梶川 祥世 玉川大学, リベラルアーツ学部, 教授 (70384724)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 乳児 / 父親 / 母親 / 音楽 / 歌 / 身体動作 / リズム同期 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は「育児における音楽使用が、子どもと養育者のコミュニケーション協創システム発達を促進するメカニズム」を明らかにすることである。前年度までの研究では、0歳児と大人が音楽聴取と身体運動を共同で経験することが、子どもの情動反応や注視行動にもたらす影響について検討を進めてきた。養育者である母親が子どもに歌いかけたり音楽を共に聴いたりするような音楽を用いた育児場面では、母子の自律神経系の活動状態が同期し、鎮静傾向が維持されやすいことが明らかになった。また初対面の成人女性と音楽を聴きながら相手の動きおよび音楽のリズムと同期する身体運動を受動的に行うと、子どもはその女性の顔写真を選好する傾向がみられることも示された。これらより、母親に加えて初対面の他人においても、乳児と大人のあいだの絆の形成に対し、音楽とそれに付随する身体運動の共同経験が関与することが示唆された。 今年度は、上記後半の初対面の他人との音楽・身体運動共有実験のデータ収集を完了する予定であったが、直接対面が必要な実験であるため、コロナ禍の影響により中断を余儀なくされた。そこで既得データの詳細な分析を続ける一方で、養育者である父親にも焦点を当てて、家庭での音楽を使用した働きかけと子どもの反応についての新たな遠隔調査を開始した。本調査では、8~9ヶ月齢の乳児の父親と母親それぞれが、子どもを膝に抱いて指定の童謡曲を歌いかける場面を、家庭のスマートフォンで1ヶ月間に4回定期的に撮影してもらった。この動画に基づき、歌いかけの音響的特徴、親子のリズミカルな身体動作のテンポとタイミング、子どもの情動的反応の分析を進めた。この結果、父親の子どもへの愛着や子育てに対する自信、子どもと関わる量が、歌いかけ時の身体動作リズムと関連する傾向、また歌いかけの音響特徴が回数を経て変化する共通傾向を把握した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遠隔調査は今年度開始したため、対面調査とは異なる新たな手続きの確定と調査参加者募集等に時間を要し、目標データ数20組(父母・子)に対し13組のデータ収集を完了したところである。さらにデータ収集と分析を継続中である。初対面他人との音楽・身体動作共有実験については、コロナ感染拡大状況により昨年3月から現在まで中断しており、データ収集完了のめどが立っていないことから、計画より遅れが生じている。今後所属研究施設の対応に合わせて実験を再開するために、対応・対策の準備を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
家庭での音楽を用いた働きかけに関する遠隔調査は、今年度に残る7組のデータを収集し分析を完了する。中断している実験については、可能になり次第再開してデータ収集を完了する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表がオンラインとなり、出張旅費の支出がなくなったことと、実験中断のため人件費が減少となったことが使用額変更の理由である。次年度は遠隔調査のデータ分析のための人件費と出張が可能になった場合の学会参加費と出張費、投稿準備中の論文の英文校閲料に使用する計画である。
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