研究課題/領域番号 |
18K02461
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
齋藤 慈子 上智大学, 総合人間科学部, 准教授 (00415572)
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研究分担者 |
橋弥 和秀 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (20324593)
池田 功毅 中京大学, 心理学部, 助教 (20709240)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 乳幼児顔 / かわいさ認知 / 養育欲求 |
研究実績の概要 |
「社会の中の子育て」が理想とされる中、現状は理想からは程遠い。生物学的には「子ども=かわいい=世話したい」でないのは当然である中、どのような人が、どのような齢の子どもに、どのようにかかわってくれるのかを明らかにすることは、社会の中の子育てを促進するためのシステム構築に重要である。本研究では、生活史戦略の理論に基づき、親、保育者、一般成人を対象に、子どもに対する認知を測定することで、上記問いに答えることを目的としている。 本年度は、大学生における育児観を調べるため、三歳児神話尺度の作成を試みた。大日向 (2001) の定義を参考に項目を作成し、大学生女子99名を対象にデータを収集した。結果、「幼少期母親の就労否定」因子、「母親重視」因子と名付けられる2つの因子が抽出された。回答に偏りの見られた項目から、子育てにおける母親以外の人の重要性は、多くの大学生女子に認識されている一方で、幼少期における母親の存在を重視する人も多く見られることが明らかとなった。 また、親としてのおよび保育者としての子どもの認知の違いを明らかにするため、保育所で保育士として働いており、かつ子育て経験のある母親6名を対象にインタビュー調査を実施した。保育、子育てそれぞれについて、大変なこと、嬉しい・楽しいこと、保育と子育ての違いを聞いた結果、共通点として【子どもの成長のサポート】【子どもの成長を感じる】【子どもがかわいい】などが見いだされた。相違点として【集団であるか否か】【仕事か否か】【個のぶつかりの有無】【家族関係も含んだ関係性の有無】などが見いだされた。 その他、子育ての生物学的なとらえ方やその多様性について普及すべく、一般向けの書籍『正解は一つじゃない―子育てする動物たち』(2019年10月刊行東京大学出版)を編集・執筆・出版した。当該研究の内容も紹介された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、大学生における育児観の調査、保育士を対象とした調査について上記のように進展することができた。その成果は、日本心理学会第83回大会、日本発達心理学会第31回大会でそれぞれポスター発表を行った。さらに発達心理学会の同大会では、上記書籍の執筆者とともに、ラウンドテーブル「子育ての正解は一つじゃない」を企画した。 6月には九州大学橋彌准教授、中京大学池田助教との打ち合わせを行い、大規模調査実施に向けて準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
母親、大学生(教育学部・一般)を対象にした、乳幼児顔の評定調査、保育士へのインタビュー結果について、さらなる分析を行い、結果を論文として発表する予定である。また、生活史戦略にかかわる変数とそのための具体的質問項目の選定を行い、それらの変数も扱った大規模調査を実施する予定である。親、保育士を対象とした調査のために、九州大学の橋彌和秀准教授、武蔵野大学の箕輪潤子准教授の協力を得て、参加者集めの準備を進める。 池田功毅氏の所属が変更となり、東京を拠点とすることになったため、研究代表者との連携がよりスムーズに行えるようになる。連携によりネットワーク分析を用いて、乳幼児の認知や養育欲求に影響を与える要因を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
繰り越しされている予算の大部分は、大規模Web調査を実施するためのものである。本助成金は繰り越しが可能であることを鑑み、念のため初年度で請求していた。大規模Web調査の前に項目について精査する必要性が生じたため、実施を遅らせているが、次年度での実施で研究計画の遂行に問題はない。
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