本研究は,乳幼児期の子どもの「資質・能力」に焦点を当て,子どもの「自発的な活動としての遊び」に見られる「学びの基盤」を明らかにすることである。「学びの基盤」とは,いわゆる早期教育や小学校での学習内容を先取りするような前倒し教育ではなく,子どもの「自発的な活動を通しての遊び」によって獲得される「学びの基盤」のことであり,子どもの「遊び」を丁寧に考察することにより,乳幼児期にふさわしい「学び」について考察することを目的としている。特に「幼保小の連携」や「架け橋プログラム」の議論に見られるように,乳幼児期の育ちと学びが児童期の育ちと学びにどのようにつながるのか,丁寧に考察する必要があるが十分に共有できているとは言い難い現状も見られる。 今年度は,幼稚園と小学校の連携の現状を観察や教師へのインタビューによって考察した。特に小学校教師が戸惑う子どもの姿を保育者がどのように見ているのか,お互いの視点から話し合うことで深めることができた。 子どもの姿を丁寧に観察し,保育者や教師ととカンファレンスを重ねることによって,「自発的な活動としての遊び」が,結果として「学びの基盤」となること,その際,分かりやすく説明しやすい「活動」としてではなく,子どもの思いを丁寧に受け止めることが,何よりも重要であることが明らかになった。一方でそのような姿を捉える視点が小学校教師とは違っていたり,保育者同士でも違うため,同じ状況を一緒に見たり,具体的な子どもの姿から語ることが,より重要であることも明らかになった。
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