本研究の目的は、養育者のモニタリングと保育者/教師の見守りに焦点を当て、幼小接続期の養育と保育の質が子どもの動機づけや自己制御能力へつながる機序を解明することであった。2段階の調査が計画され実行された。Phase1:学齢期の教師のモニタリング尺度を検討するため、小学校1年生の教師に対しインタビュー調査とアンケート調査を行い、回答を得た。内容分析の結果、保育者の見守り尺度項目(内海、2020)の内容との連続性が認められたため、量的調査では文脈を学校教育に修正した項目を使用することとした。Phase2:就学前後にわたる量的縦断調査を行った。①家庭での相互作用として、親のモニタリングと子どもの動機づけ、および親のモニタリングと子どもの自己制御との間の時間的因果関係を調べるため, 2回の測定による交差遅延効果モデルと同時効果モデルを検証した。3~4歳児のサンプルでは、モニタリングは自己制御の原因となり結果となる相乗的相互作用の関係性が認められた。しかし、5歳児のサンプルでは、子どもの自己制御が高いほど親のモニタリングを引き出すという、子どもから親への効果が示唆された。動機づけについては、親のモニタリングが高いほど子どもの動機づけが高まるという、親から子どもへの効果が示唆された。②家庭・園・学校環境から子どものアウトカム(学業成績/非認知能力/困難さ)を説明するモデルの検討では、就学以降の学業成績、自己主張、困難さには親と子ども両方の要因が影響していること、粘り強さと協調性については、親と子こどもと教師の要因が影響していること、好奇心については、教師と子どもの要因が重要であることが示唆された。最終年度は、幼小接続期における親のモニタリング/保育者の見守りと子どものアウトカム(自己制御・非認知能力)との関連、および保育の環境設定と保育者の見守りの具体的内容について、学会発表を行った。
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