研究課題/領域番号 |
18K02482
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
高木 真人 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 准教授 (10314303)
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研究分担者 |
佐久間 治 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (80251627)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | こども / 外遊び / 保育施設 / GPS / 密度 / 行動量 |
研究実績の概要 |
2018年度は静岡県のNY園とYK園の2園において、こどもたちの密度と行動量(運動量)の関係についてのGPS調査を行なった。各園の5歳児の腰部分にGPSロガーを取り付け、5歳児だけで低密度で遊んでいる状態(低密度時)と、3,4歳児らも一緒になり高密度で遊んでいる状態(高密度時)と、それぞれの状況において50-60分ほど自由に外遊びしてもらった。各園とも低密度時の調査と高密度時の調査は別々の日に分けて行なった。 NY園では、低密度時の一人あたり園庭面積28.4㎡→高密度時の一人あたり園庭面積7.7㎡に変わることにより、1時間あたりの平均行動量は1666m→1300mへと大きく減少した。この園ではこどもたちの密度が高くなることにより、オープンスペースで遊んでいた5歳児の割合が少し減少し、その代わり他の遊び場で遊ぶ5歳児の割合が少し増加し、それにともない遊びの種類も変わったということが行動量の減少につながったのではないかと推測される。また、YK園では、低密度時の一人あたり園庭面積18.2㎡→高密度時の一人あたり園庭面積4.8㎡に変わることにより、1時間あたりの平均行動量は2044m→1980mへとわずかに減少した。 以上のように、2018年度に調査した園においてはこどもたちの密度が高くなると、行動量が減少する場合もあるということが確認できた。低密度→高密度の変化により行動量がどのくらい減少するのかは、オープンスペースにおけるこどもたちの密度に加え、オープンスペース以外の遊び場の状況にもよると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度に行った保育施設2園での調査・分析から、園庭で遊ぶこどもたちの密度が高くなることによってその行動量(運動量)が減少する場合もあると明らかになった。この結果については、日本建築学会大会学術講演会(2019年9月4日-6日)において発表する予定(投稿済)である。 しかし、一方で2017年に行なった調査も含め、密度が高くなっても行動量が減少しない場合もある。この違いは、オープンスペース以外の遊び場の状況によるのではないかと考えられる。園庭全体におけるオープンスペースの面積や面積割合がそもそも少ない場合には、オープンスペースでの遊び自体が減少し行動量が少なくなる可能性が高く、こどもたちの密度が変化しても影響が出にくいであろう。また、オープンスペース以外に高密度でも遊べるような魅力的な遊び場があって、そちらにこどもたちが集中する場合にも、こどもたちの密度が変化しても影響が出にくいであろう。そこで、GPS調査の際に撮影したビデオカメラのデータを用いて、こどもたちの密度と遊び場(遊び種類)の関係についての詳細な分析がさらに必要と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度に2園でGPS調査を行なった際に撮影したビデオカメラのデータに基づく遊び場(遊び種類)に関する詳細な分析を進める。まずデータをもとに一定時間ごと(約5分おき)の各遊び場で遊んでいる人数を把握し、プロット図を作成する。GPS調査の結果とも合わせて、各こどもたちの遊び場ごとの滞在時間や遊び場の移り変わり、遊び場ごとの滞在人数の割合、そして密度が変化した時に、それらにどのような違いがみられるのかを明らかにしていく。また、2019年度も2,3園においてGPSを用いた調査を行う予定であり、調査対象の選定においては、オープンスペース以外の遊び場の状況を十分考慮する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は、GPS調査による行動量分析がやや遅れたため、ビデオカメラのデータに基づく遊び場(遊び種類)に関する分析について未完了の部分がある。この遊び場(遊び種類)に関する分析を完了させてから次の調査対象の施設を選定した方がよいと考え、一部の調査・分析を2019年度に繰り越したため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額については、遊び場(遊び種類)に関する分析にかかる謝金、GPS調査にかかる旅費などに使用する予定である。
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