研究課題/領域番号 |
18K02484
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
松本 博雄 香川大学, 教育学部, 准教授 (20352883)
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研究分担者 |
松井 剛太 香川大学, 教育学部, 准教授 (50432703)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リテラシー / 就学前教育 / 保育 / 初等教育 / 幼児 / 児童 / 保育評価 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、就学前教育と初等教育の円滑な接続への寄与を念頭に、幼児・学童期初期に共通して適用可能である「言葉を用いた表現活動への参加の量と質」を指標とする、初期リテラシー(literacy)習得の評価方法の開発であった。それにあたり、教育実践におけるリテラシー習得の位置づけと内容、また就学前から初等教育への移行環境に関し日本とは対照的な背景をもつ、英国・イングランドの就学前・初等教育実践におけるリテラシー指導の実態把握のための観察調査・実践者へのインタビュー調査を、現地の2校のPrimary schoolにて2018年-19年の間にわたって実施した。 イングランドでの調査からは、リテラシー指導において、個々の語や文字を正確に書くこと以上に、それを用いて何を表現するかという内容、その前提としての表現しようとする意欲・態度の重視という点で、クラスや学年を超えた共通性があることが見いだされた。ここから示唆されるのは、初期のリテラシー指導として、子どもの「声」(Children’s voices) を引き出し、言葉で自分の思いや考えを表現する基盤の形成がポイントとなるということである。 その成果をふまえ、国内の2つの幼稚園の協力を得て、子どもが言葉を用いて表現したくなる構えを引き出すという観点から、研究協力者である大学生と4/5歳クラス児との間で文字や絵を描いた手紙のやりとりを日常の保育実践の中に埋め込んで実施するアクションリサーチを本年度から開始した。その結果、伝えたくなる相手と日々の生活に基づく経験、そのための道具立てが適切に設定されることで、幼児の「声」が「書く/描く」表現として引き出されうること、また書き言葉での定型的な表現が、個々の多様な思いや考えを今後適切に表現する力を発達させるうえでの基盤となりうることなどが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では研究1として、初期リテラシー評価指標の妥当性を検討するための国際比較調査の実施(初年・2年次)、研究2として、考案された評価指標の適用可能性を検討するための就学前/初等教育との比較調査(最終年次)を計画していた。2年次である本年は、イングランドでの追加調査の実施に加えて、上述の国内幼稚園でのアクションリサーチを開始した。研究成果はAssociation for Professional Development in Early Years (TACTYC) やUnited Kingdom Literacy Association (UKLA) 等の国際会議で報告・討論するとともに、International Journal of Early Years Education誌にて関連研究の成果を出版した(Matsumoto & Tsuneda, 2018)。進捗状況はほぼ予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
コロナウィルス感染状況の広がりによって、予定していたフィールド調査がすぐには難しいことを考え、目標を絞って調査計画を再考中である。具体的には、1-2年目にイングランドにて実施した就学前・初等教育実践におけるリテラシー指導の実態把握のための観察およびインタビュー調査について論文化する。また、2年次から実施している幼稚園でのアクションリサーチを可能な範囲で継続するとともに、就学前/初等教育との比較調査については、フィールド研究ではなく教師へのインタビュー調査等として実施することを検討する。国外の研究者との成果共有および共同検討は、発表予定だった国際会議(UKLA 56th International Conference)の延期が決定したため、オンライン会議等の方法を用いての実施を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末までフィールド調査を実施し、その進行状況を確認しながら予算を使用していたため、助成金使用〆切との関係で次年度使用額が生じた。当該助成金は次年度の継続調査の物品費として使用予定である。
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