本研究の目的は、就学前教育と初等教育の円滑な接続への寄与を念頭に、幼児・学童期初期に共通して適用可能である「言葉を用いた表現活動への参加の量と質」を指標とする、初期リテラシー(literacy)習得の評価方法の開発であった。研究の最終年度であった本年は、本科研費研究による4年間の成果とそれ以前を合わせ、ここ10年の研究成果として『保育実践を介した幼児期の文字習得の検討:社会的側面に着目した初期リテラシー発達の視点から』の表題で博士論文研究(中央大学大学院文博乙75号)として上梓した。 具体的な調査結果としては、幼児期の初期リテラシー発達に焦点をあて、言語表現のあり方と、それを引き出し支える条件の検討を目的に、保育実践現場で保育者と共同して3年にわたり継続しているアクションリサーチ「ぶんつうプロジェクト」の結果を、心理科学研究会2022年春の全国集会乳幼児分科会(2022年4月24日)にて報告した。また更に分析を加えた資料を、日本保育学会第75回大会(2022年5月)と、United Kingdom Literacy Associationの第57回国際会議(2022年7月)にて報告し、国内外で研究交流を図る予定である。 また、就学前教育における、言葉を用いた表現活動への参加を支える具体的な手立てとしての、写真を使った保育記録のもたらす効果について、イギリスのTACTYC (Association for Professional Development in Early Years)の出版する国際学術誌'Early Years'に論文を掲載した。合わせて、幼児期・学童期における「言葉を用いた表現活動への参加の量と質」の保証へと結びつく、乳児期の経験とそれを支える保育者の手立てについて、雑誌発達(ミネルヴァ書房)に論考をまとめた。
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