研究課題/領域番号 |
18K02487
|
研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
道信 良子 札幌医科大学, 医療人育成センター, 准教授 (70336410)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 小児医療 / 小児がん / 協働意思決定 / エスノグラフィ / ヘルス・インタビュー |
研究実績の概要 |
今年度は最終年度であり、①人類学の方法論を使って、がんの子どものヘルスケアにおける意思決定と自己形成の相関を理論化すること、②子ども学の立場から、小児医療における子ども参画のあり方を提言することを目指した。 本研究の仮説「子どもの意思決定は、長い入院生活のなかで徐々に深まる自分の身体に対する認識とのかかわりのなかにある」は観察研究で実証された。すなわち、子どもの意思決定は、子ども自らの身体の認識にもとづく自己形成であり、家族や同じ病気、他の病気で入院している子どもたち、院内学級の先生、病院の医療チームなどまわりとの関係性や物理的環境も作用することが明らかになった。 次の課題は、子どもたちの意思決定と自己形成の相関について、人類学の視点から説明し、理論を立ち上げることであった。それには、長期的な視点から通院生活の記録をとり、資料の分析を進めることが必要であった。しかし、新型コロナウイルスの蔓延により、2020年2月の調査を最後に、通院生活の記録をとることができなくなった。そのため、今年度は2020年2月までの記録の分析に着手し、国際学会において中間報告を行い、海外の研究者との意見交換を実施した。また、英語論文を執筆し、2021年3月に受理された。 通院記録では次の二点が注目された。①入院中は親や医療者に大きく依存していた子どもたちが、退院後は普通の生活に戻り、自立する機会が与えられていた、②子どもたち本人も自分のことは自分で決めたいという思いをかかえていた。 本研究の一つ目の目的については、新型コロナウイルスの感染対策を徹底し調査を再開することによって達成する。それは次年度の課題とする。二つ目の目的に関しては、協働意思決定を推進するにあたり、まわりの人びとがいかに持続的に、子どもの思いを尊重し、「子どもの存在の力」を引き出していくのかということが重要であると考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
病棟における観察研究が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の一つ目の目的「人類学の方法論を使って、がんの子どものヘルスケアにおける意思決定と自己形成の相関を理論化する」については、新型コロナウイルスの感染対策を徹底し調査を再開することによって達成する。それは次年度の課題とする。 本研究の二つ目の目的「子ども学の立場から、小児医療における子ども参画のあり方を提言する」に関しては、次のように考えている。協働意思決定という新しい患者・医療者関係において、子どもがヘルスケアにおける意思決定に参画するということは、子どもの思いを尊重し、「子どもの存在の力」を引き出すものである。協働意思決定を推進するにあたり、まわりの人びとがいかに持続的に、その力を引き出していくのかということが重要である。これを目に見えてわかりやすい子ども参画のしくみとして提言する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
旅費を伴う観察研究が十分に行われなかった。国際会議(学会)が急遽遠隔になった。英語論文の執筆を進め、校閲費や学会参加費として使用する計画である。
|