研究課題
基盤研究(C)
小児がんの治療を受ける子どもの治療に対する意思は、①病棟の環境に慣れる、②仲間をつくる、③医療者と治療の目標を共有するという、3つの過程を踏んでいた。子どもたちは愛情と信頼のある関係においては、治療の意思決定を親と医療者に委ねていた。小児がん医療における協働意思決定とは、子どもが治療によりよく参加できるための臨床におけるコミュニケーションのかたちであり、それは、日常の病棟におけるより大きな人間関係を土台にしていることがわかった。
医療人類学 公衆衛生学 医療福祉学 子ども学
小児がんの協働意思決定の議論において、国際社会では、医療者や親が考える子どもの存在や権利を擁護する立場からの論考が多い。そこには自律的で明確な自己決定権をもつ「個人」として子どもをとらえる西洋社会の思想がある。本研究では、子どもと周囲の人びととの関係性に光をあてたことにより、子どもの存在の意味が社会や文化によって異なり、協働意思決定のアプローチも日本に特有の様相を見せることを明らかにした。