研究課題/領域番号 |
18K02489
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
松嶋 秀明 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (00363961)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 放課後児童クラブ / レジリエンス / フィールドワーク / 社会情動的スキル |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、貧困や被虐待経験など、逆境的でリスクのある生活をおくる子どもの「レジリエンス」を育てる場のひとつとして「放課後児童クラブ」に注目し、クラブにおける子どもの生活を数量的・質的な方法によって縦断的にとらえること、そして、研究者と現場指導員とのカンファレンスやワークショップを媒介とした協働をすすめながら、当該クラブにおける実践の質を高めることであった。 平成30年度は、いくつかの放課後児童クラブで、月に1-2度程度、継続的に参与観察を行うとともに、指導員へのインタビューを行ったり、意見交換をとおして実践の改善をはかるための戦略を協働で模索してきた。指導員との継続的な情報交換などを通して、これまでの指導員の取り組みを承認しつつ、研究者としてフィードバックをおこなった。 本研究の成功には、調査と並行してレジリエンスを高める環境づくりのための方法論の構築をおこなう必要があった。そこで、(1) 筆者がレジリエンスのモデルとして参照するMichael Ungarの諸研究を概観しつつ、(2)ニューヨークで貧困地区や黒人の支援を行ってきたLois Holtzmanのソーシャルセラピーの視察を行った。また、その日本における適用版であるJapan All starとも、活動の情報交換をおこなった。これらによって、放課後児童クラブにおける研究者の役割についても考察を深めた。 現状、逆境をかかえる子どもがクラブにおいて落ち着き、活動に主体的に参画することは、クラブの指導員が既存のルールやノウハウを現場に適用していくことを通してといよりも、それを一旦脇におき、何らかの素材を子どもに提示しつつ、それが子どもによって意味づけなおされ、新たな活動につながることをみながら、それを支援者が独自に意味づけなおすことが重要であることがうかがわれている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究ではまず学童期にある子どもがクラブにおいてどのように過ごしているのかをみる必要がある。調査者自身がクラブに参与しながらの観察を行うため、初年度は、職員のみならず児童との信頼関係を構築しつつ参与観察をおこなっていくことに時間を費やした。当初、質問紙による大規模な数量的調査の実施も計画したが、妥当性の高い質問紙の構成に時間がかかり、また、どのクラブにおいても職員は多忙であるため、研究協力を依頼することに難航しており、遅れている状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
H31(R元)年度は、研究協力者へのアクセスについて、他の放課後児童クラブへも随時依頼をおこない、多くの放課後児童クラブにおいて、逆境にある子どものレジリエンスを構築するための環境設定のあり方、職員の働きかけのあり方などについて観察、インタビューをすすめていく。また、子どもがクラブをどのようにとらえているのかについての調査もあわせて計画していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度計画していた研究協力施設および研究協力者への研究依頼や、本調査が実施に至らなかったため、当初の計画よりも調査資料の整理・入力にかかる謝金が少なくなったことや、購入予定であった備品の納入が諸事情から遅れたために次年度使用額が生じた。今年度については、新たな研究協力クラブでの調査実施後に必要となるデータ整理にかかる謝金が増額する見込みである。
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