本研究では、貧困や被虐待経験など、逆境的でリスクのある生活をおくる子どもの「レジリエンス」を育てる場のひとつとして「放課後児童クラブ」に注目した。クラブにおける子どもの生活を質的な方法によってにとらえ、研究者と指導員との協働をとおして、当該クラブにおける実践の質の改善を目的としてきた。ある民営の放課後児童クラブでのフィールドワークや、指導員へのインタビューをおこなった。その結果、このクラブのもつ、外遊びが中心で、クラブ内の行動の制約のすくない実践のなかでは、脆弱性をかかえる子どもであっても、いきいきと、主体的に活動に参加できていることが明らかになった。これは指導員が最初からできていたことというよりも、実践を試行錯誤するなかで子どもとの相互作用のなかでみいだされていたことがわかった。ただし、その一方で、子どもたちの衝動的な暴力や、規範からの逸脱が、子ども集団のなかでのいじめにつながることもあった。こうして排斥された子どもがさらなる逸脱行動にはしるという悪循環もみられた。これは子どもだけの要因でおこっていることではなく、例えば、職員がいじめなどのトラブルに適切に介入することができないことや、他の児童の安全をまもる観点から、暴力をはたらく子どもの行動を制限せざるをえないといったように、職員の関わりが影響していることもあった。集団内でみられるトラブルへの対処ができない場合には、そうした「問題」の原因が、脆弱性をもつ子ども本人の「障碍」とからめて語られることも多かった。以上のことから、子どものレジリエンスを育てるためには、脆弱性をもつ本人の特性そのものというよりも、クラブの物的環境や、子どもの関係性を育て、葛藤を解決していくための知識の蓄積が重要であると示唆された。
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