研究実績の概要 |
2018年10月に北海道で起こった胆振東部地震に伴う停電により住宅における照明が使用できなくなった。これに伴い、中学生の就寝時刻がどのように変化したかを調査した。調査対象は北海道東端の浜中町にある霧多布中学校であった。この地区は震源から遠く離れているため、震度は2に留まり、地震そのものによる影響は皆無であったが、北海道全域が停電したため、停電の影響は受けた。また、通信事業者のうちdocomoは即座に回復し、その他の通信事業者の状況も徐々に現状に復帰した。このため、地震の有った次の夜における睡眠の変化は主に停電による人工照明の喪失によるものであると考えられた。普段の就寝時刻22h45m)と地震の次の夜の就寝時刻(21:23)を比較すると1時間半弱(1h22m)前進(早寝)していた。一方で翌朝の起床時刻には統計的な有意差は認められなかった(6h36m vs 6h53m)。結果として睡眠時間は普段と比較して約1時間半(1h38m)増加していた(7h52m vs 9h30m)。停電した夜の睡眠時間である9h30mは米国睡眠財団が提唱する、この年齢の推奨睡眠時間(6-13y: 9-11h, 14-17y: 8-10h)や米国睡眠医学会が提唱する、推奨睡眠時間(13-18y: 8-10h)とほぼ一致する。以上からも日本の住宅の明るすぎる照明環境が子供達の就床時刻に影響を及ぼしていることが示唆される。以上の結果は、2019年の日本睡眠学会で発表し、その後、2020年に日本睡眠学会の機関誌であるSleep and Biological Rhythmsに掲載された(Fukuda et al. Sleep and Biological Rhythms, 2020, 18, 351-4.)。現在、照明の種類と入浴の時刻に関するネット調査を計画中である。
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