研究課題/領域番号 |
18K02498
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研究機関 | 東京家政大学 |
研究代表者 |
岩崎 美智子 東京家政大学, 家政学部, 教授 (90335828)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ライフストーリー / 守姉 / 社会関係資本 / 自立支援 / メンタリング・システム |
研究実績の概要 |
2年目である令和元年度は、前年度に実施したライフストーリー・インタビューの補足と、メンタリング・システムのモデルになると考えられる児童養護施設退所者支援の実際について調査を行った。 宮古諸島の一つである伊良部島佐良浜地区に長年住む女性の語りをとおして島の生活や経験を考察した結果、以下の諸点が明らかになった。①佐良浜地区では、カツオ漁の分け前を配ることによって、漁師だけでなく島びとたちも漁業を支え、一体感を築いていた。②島では、祭祀や年中行事といった儀礼によって、社会集団が自己を再確認し、島びとたちの「池間民族」アイデンティティが形成されていた。③島びとたちは、他者との関係性において開放的であり、何らかのつながりがある見知らぬ土地に対しても親近感を抱いていた。このようなことから、1930年代から1950年代当時の佐良浜には、個人をつなぐネットワークと、互酬性、信頼性という「社会関係資本」が存在していたため、そこでは家族以外の人の手による社会的な子育ての一形態である「守姉」という子守の習慣も、地域社会の住民に受け入れやすかったことが理解された。 また、メンタリング・システムの先進事例を検討するため、関東地方にある児童養護施設で聞き取り調査を実施した。その施設では、退所者支援の一環として、住宅支援と生活支援の事業を行っている。一人暮らしをするための住宅費は自治体が補助し、精神的支援はボランティアである市民(「世話人」と呼ぶ)が一対一で相談にのったりするのである。メンティである退所者とメンターである「世話人」をつなぐマッチングや交流の経過をモニターし支援するのが施設のコーディネーターである。このような若者の自立支援システムは、地域社会におけるメンタリング・システムのモデル開発の参考となりうることが本調査によって確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和元年度から研究代表者が学科長になり、学内業務遂行のため、研究時間の確保が困難になった。具体的には、予定していた海外調査が実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、最終年度であるため、先行事例の収集を目的として、昨年実施できなかったメンタリング・センター(アメリカ合衆国テキサス州)での聞き取り調査を実施したいと考えている。また、国内児童養護施設での詳細な個別インタビュー調査も予定しているが、コロナウイルス禍による学年暦の変更や大学行事の延期、調査日程の延期や見直し依頼が重なったため、当初の研究計画を大幅に変更せざるを得なくなっている。 そのため、いままで収集してきたデータのとりまとめや論文執筆は行うものの、今後の状況次第では調査を来年度以降に延期するか中止するなどの可能性を考えざるを得ない。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が学内役職に就いたことによる多忙により海外学術調査が実施できず、旅費等(研究代表者と研究協力者2人分)が残ってしまった。 令和2年度は、海外出張の時間がとれるならば、アメリカ合衆国での聞き取り調査を実施したい。
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