研究課題/領域番号 |
18K02498
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研究機関 | 東京家政大学 |
研究代表者 |
岩崎 美智子 東京家政大学, 家政学部, 教授 (90335828)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 守姉 / 選択的・擬制的きょうだい関係 / 承認 / アロケア / メンタリング・システム |
研究実績の概要 |
当初最終年度となるはずだった令和2年度においては、メンタリング・システムの先進的な取り組みを行っている自治体や団体など国内2か所での訪問調査とアメリカ合衆国のメンタリングセンターでの聞き取り調査を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大傾向が収まらないため、やむを得ず国内外の調査をすべて断念した。 そのため、いままで2年間(予備調査をいれると3年間)沖縄・宮古諸島で収集した聞き取りデータをまとめて、学会発表と論文執筆を行った。 研究の成果は、以下のとおりである。「1.島の生活」については、①戦後まもなくの宮古島と伊良部島では、台湾・九州からの引き揚げ、マラリアの大流行、食糧難といった問題に直面して、島民の生活は厳しかった、②宮古島では、住民たちは相互扶助的で、社会的弱者を排除することなく生活しており、子どもたちにとっても開放的であった。いっぽうで、島内の中心からみると周縁にあたる地域では、差別的な対応も見られた。③島民の一部が持つ「池間民族」としての誇りは、池間島のみならず、伊良部島と宮古島でも同様に見出すことができた。 「2.守姉」については、①「守姉-守子関係」が選択的・擬制的きょうだい関係であること、②守姉は守子の世話をすることによって愛情をはぐくみ、守子にとって憧れのロールモデルとなる、③地域社会の人々から承認を得ることが守姉の自信につながり、守姉は責任をもって役割をこなすようになる、④守姉と守子の関係は周囲の人々から認められることによって特別な関係となり、互いが「重要な他者」となってその関係性が続いていく等を明らかにし、「守姉」という子守の習俗は、家族以外の人の手による「アロケア」であると同時にインフォーマルなメンタリング・システムの一形態であると位置づけた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大傾向が収まらないため、予定していた国内外の調査をすべて断念するなど、大幅に研究計画を見直した。その結果、メンタリング・システムの多様なヴァリエーションの比較検討、3年間の研究成果のまとめを行うことができなかった。研究期間の1年延長を申請し認めていただいたため、令和3年度には、一部の先進事例の検討やこれまでの成果を取りまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の新型コロナウイルス感染状況にもよるが、当初の計画を変更し、海外調査は断念し、国内調査を実施したい。その場合は、国内でもなるべく都内や関東地方での調査となる見込みである。また、調査が実施できない可能性もあるので、文献や公開されている資料・データをもとに、メンタリング・プログラムの試案を作成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大により、予定していた海外や国内遠方への調査がすべて中止となったため、調査に使用する予定だった費用(海外渡航費を含む旅費、謝金など)が残った。 そのため、令和3年度は、新型コロナウイルス感染状況が改善すれば沖縄での補足調査を実施したいので、調査旅費等に研究費を使用する。状況が改善しないようであれば、都内と関東地方で地域プログラムやボランティア活動を実践している方々にインタビュー調査を行うための旅費・謝金とともに、メンタリング・プログラムの試案を作成するための文献・資料・物品の購入等に充てる予定である。また、最終年度であることから研究成果報告書を作成するので、印刷代や配布のための郵送料等として使用予定である。
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