新型コロナ感染拡大による補助事業期間の再延長が認められて最終年度となった令和4年度は、守姉や守子だった方々への補足インタビューや都内児童養護施設卒園生へのインタビューができないか研究協力者の方々と何度も相談して日程を決めていたものの、調査実施予定の時期に新型コロナウイルス感染者が増加傾向になるなど、またもや調査がかなわず、涙を飲んだ。そこで、これまでの調査データを再度検討して、学会での口頭発表、論文執筆、報告書の作成を行った。 学会発表では、守姉が守子を育てる経験によって自らも成長することや、高齢になった守姉が守子からケアされるという「ケア役割の逆転現象」が見られることを指摘し、「守姉」のケアには相互性が見られる点を明らかにした。また、地域社会において、遊びながら子守をすることによって子ども同士が社会の中で学び、育ちあうことや、地域の人びとから「守姉」としての信頼や承認を得るという、かつての宮古諸島における子育ち機能について考察を行った。 論文としては、本研究課題の対象が1960年代当時の子守や社会状況だったことから、現在の宮古島における子育ち・子育て状況を確認する必要があると考え、文献や資料、インタビュー記録から社会的養育の状況を概観し、沖縄本島や本土と比較しながら検討した。 また、5年間の研究成果を、「『カツオの島』の暮らしと『守姉』―宮古諸島の女性たちに聴く」と題した報告書(論文集)としてまとめた。今回は、調査実施時期が新型コロナ感染拡大の時期と重なったため、児童養護施設卒園生支援事業関係者への聞き取り調査が何度も中止に追い込まれたことから研究計画が変更となり、メンタリング・システムについての考察が十分ではなく、現代の地域社会への援用可能性の検討ができなかったため、今後の課題としたい。
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