研究課題/領域番号 |
18K02500
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研究機関 | 東海学院大学 |
研究代表者 |
川嶋 健太郎 東海学院大学, 人間関係学部, 教授 (80360204)
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研究分担者 |
蓮見 元子 川村学園女子大学, 文学部, 教授 (60156304)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 意思決定支援 / 母子関係 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、保護者による意思決定支援に関する行動観察および意思決定支援尺度作成の準備のための質問紙調査を行った。行動観察については母親による幼児の意思決定支援場面および幼児同士の共同意思決定場面の2種類の行動観察を行った。行動観察1:幼児に対する母親の意思決定支援行動の観察で、10 組の母子が自由に遊ぶ場面を設定し、2歳 6ヵ月時,3歳時における子どもの意思決定行動への母親の支援行動(主に発話)を分析した。行動観察2:4,5歳の保育園児が、2~3名で1つのものを選ばなくてはならないという場面を設定し、共同意思決定行動と大人の介入効果について検討した。年齢差や男女差、課題差がみられた。決定しきれない場合に大人が介入したが、その効果はあまりなかった。以上の結果をまとめて学会にてポスター発表を行った。 また質問紙調査は高齢者・母親・大学生を対象に意思決定支援に関した調査を実施した。質問紙調査1:高齢者と子どものかかわりについてのWEB調査を行った。質問紙調査2:母親が子どもにどのような意思決定支援を行っているのか、育児における困り感や子どもの意思決定行動タイプ、子どもの発達段階とどう関係するのか、400名の幼児を持つ母親にWEB調査を行った。質問紙調査3:幼少時に保護者から受けた意思決定支援行動と現在の自己決定感について大学生を対象に質問紙調査を行った。保護者の意思決定支援行動は因子分析の結果、助言をする、急がせる、理由を聞く、誘導する、認める、の5因子構造を持つことが示された。さらに各因子による尺度得点に基づいてクラスター分析を行った結果、参加者が3つのクラスターに分類されること、急がせる、理由を聞く得点の高いクラスターにおいて大学生の現時点の自己決定感が低いことが示された。以上の結果について研究紀要論文を執筆し、学会でのポスター発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
保護者による意思決定支援行動およびそのきっかけとなる子どもの行動について,行動観察時の観察カテゴリーを作成することを目標に,2種類の行動観察を実施した。行動観察1において当初の予定通り子どもが2歳から3歳になるまでの観察と分析を行い,今後観察すべき意思決定時の保護者の支援的行動および幼児の行動を検討することが出来た。行動観察2では複数の幼児による共同意思決定において課題の影響も検討することが出来た。以上から,観察するべき行動が決まりつつあるが,複数の観察者による観察結果の一致度を高めるための行動の定義づけなど課題とするべき点が残っている。 また保護者・子どもの個人差があるため,安定的に保護者の意思決定支援行動を引き起こす実験課題を作成している途中である。現状では非常に簡単な選択課題(色紙の選択など)であったが,すぐに意思決定できてしまう場合には支援行動を引き起こすことが出来ない。安定的に保護者の意思決定支援行動を引き起こす課題を検討中である。 意思決定支援尺度の作成に関しては,現在,質問項目を再検討中である。質問紙調査3での質問項目作成においては,以前に行った幼稚園児童の保護者へのインタビューを元に項目を作成した。作成時にはより多くの因子を想定していたが,結果としては5因子となり想定とは大きく異なっていた。これは質問項目の文章内容に問題があり,調査参加者にわかりづらい項目であった可能性がある。そのほか質問紙調査1は予定通り実施され報告がすんでいるが,質問紙調査2については自由記述式の質問紙を実施して、その中から質問項目を吟味し、作成したので、実施が年度末になってしまった。分析・報告は平成31年度に持ち越しとなった。
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今後の研究の推進方策 |
意思決定場面での母子相互作用の行動観察では保護者と児童で一緒に行える意思決定課題(絵本型)を制作し,安定的に保護者の意思決定支援行動を観察していく。支援を阻害する要因がない状況で保護者と子どもの意思決定プロセスを記録し,アノテーションソフトを用いて分析する。また意思決定プロセスの促進・阻害要因を探索する。さらに制作している意思決定支援尺度を参加者にも実施し,基準関連妥当性の検討を行う。 平成30年度から継続して行動観察1については、子どもが5歳になるまで縦断的に観察を続け、その発達的変化、および、子どもの意思決定を育成する母子相互作用の解明予定である。行動観察2については、保育園児に行った同じ課題を大学生に実施し、大学生はどのように意思決定するのか、意思決定に至る過程と意思決定できなかったときの有効な介入方法について明らかにする。 意思決定支援尺度の作成に関しては,保護者を対象とした新たな質問項目を作成する。これまで保護者・大学生を対象に質問項目を作成してきたが支援行動の把握に十分とは言えない。そこで小学生・幼児を持つ母親がどのように子どもの意思決定を育成してきたのか、新たな尺度をつくって検討する。行動観察に参加した保護者に対しても実施し、実際の行動と質問項目への回答の相関を検討したい。その後にWeb調査会社に委託して試作の項目を評価する。質問紙調査2について平成30年度末に実施したので、来年度その結果をまとめ、日本心理学会等で発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用が生じた理由は、1.行動観察において以前から保有していたビデオカメラを使用して、ビデオカメラの購入を行わなかったこと、2.意思決定支援尺度作成においてWeb調査会社への調査委託を行わなかったことが主な原因である。ビデオカメラの購入を行わなかった理由は、行動観察用の課題を作成中により保護者と子どものそばで自然な(注意を喚起しない)状態で撮影することが望ましいことから小型カメラを埋め込んだ撮影用の台を平成31年度に自作することにしたからである。Web質問調査を業者へ委託しなかった理由は大学生対象の質問紙調査を実施して質問項目のブラッシュアップを行っていたからである。大学生の調査参加者は所属する大学の学生に依頼することで確保することができた。 平成31年度は撮影用の台を作成し、小型カメラを購入する。行動観察を実施する際の参加者への謝金、また撮影したビデオ映像の解析作業に謝金を要する。また保護者を対象としたWeb質問調査を実施するため委託費用が発生する。
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